「すみません、急に話したいだなんて」

その人が現在身を寄せているジムの前まで来て、
オレは電話を掛けてみた。

諦め半分で会えないかと聞いたところ、
二つ返事で了承の言葉が返ってきたのだ。






「それは別にいいんだけど…」

何かあった? と、彼女は心配そうに言う。





「そういうわけじゃないんですけど」

オレは曖昧に笑ってみせた。
けど、目の前の人は心配そうな表情のまま。





「……ちょっと、待っててくれる?」

「はい」

少し考えあとそう言って、彼女はいったん部屋に戻る。
そして、割とすぐにまた出てきた。

彼女のさっきと違うところは、
少し厚着をして、出かけるというような格好になっていること。






「少し、歩こうよ」

笑って、そう言った。
オレが黙って頷いたのを確認すると、「行こう」と言って
彼女は歩き出す。






「あの……大丈夫なんですか」

「何が?」

「こんな時間に出かけて」

この人のことを溺愛している父娘のことだ。
なんと言って出てきたのかは解らないが、
こんな時間に…しかも男と一緒だなんて知ったら
怒り狂うのではないだろうか。







「大丈夫だよ、それらしい理由をつけてきたから」

それなりに生きてきたんだもの。
うまく理由をつくることもできるよ。

悪戯っぽく笑った顔を見て、微笑ましくなった。
心が、あったかくなった。


――ああ、やっぱり。
   今日この人に会えて、良かった。








「あたしはさ、あんまり鋭いほうじゃないけど、」

「?」

「何かもやもやしてたのは、無くなったみたいだね」

今度は優しい笑みを浮かべて言う。

――鋭いほうじゃないなんて、全く…
   そんなこと、ないというのに。







「はい……
 もう、大丈夫です」

きっとあなたは、
オレなんかよりも、すごい「目」を持っているのだろう。
















だから解ってくれる



(心の中の、その「もやもや」に)
























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伊月先輩まじかっこよすぎますね。大好きです。
キューティクルまじ羨ましい(そこかよ

試合中の伊月先輩がイケメンすぎて
いつも見とれているわたしです。