「……先生!」

屋上庭園の出入り口付近で空を見上げていたとき、
待っていた人の声が聞こえた。

息切れしているところからして、
かなり急いできてくれたらしいことがうかがえる。





「大丈夫?」

「ええ、これくらいは……
 一応、運動部ですから」

問題ありません、と、あまり表情を崩さずに言う。





「それならいいんだけど……
 でも、なんでそんなに慌てて来たの?」

会いたいと言い出したのは、あたしなんだから。
そんなに慌てなくても、逃げたりしないよ。

あたしがそう言うと今度は困ったような顔をして、
少し間を空けて言う。







「それは……
 先生が、また一人でこの梯子を上るかもしれない、と思ったので……」

ああ、なるほど。
そういうことか、と思った。


――屋上庭園の出入り口には梯子がついていて、
上れるようになっている。

ただ、それを好んで上る人は、点検のためで来た人とか…
そういう人たちだけ、なんだろうけれど。


……とにかく、そんな人気のない場所なので、
ふたりで会うのにちょうどいいと思い…
今ではよく使っている、というわけだ。

そしてその場所へ続くこの梯子は、狭くて少し危ない。
前にひとりで上り彼を待っていたら、
心配だからひとりで上らないようにと注意されたことがあった。





「心配いらないよ。
 もう、ひとりで上ったりしないから」

あなたに心配かけたくないし、何より、
あたしもあなたに手を引いてもらって上るのが好きだから。

そう言うと、少し顔を赤くして「そうですか……」と言った。
どうやら、照れているようだ。







「そ、それじゃあ、先生……上りますか?」

「うん!」

先に上った彼に手を引いてもらい、あたしも梯子を上ってゆく。






「うわあ……」

「今日も星がよく見えますね」

「うん!」

いつものように、一緒に星空を眺めた。
最近さらに冷え込むようになってきたからか、
今日は特に、星が綺麗に見える気がした。






「ところで先生……
 メールにあった、話したいこととは何ですか?」

彼の問いを受け、あたしは持っていたものを差し出す。





「これは……」

「プレゼントだよ。
 お誕生日、おめでとう」

「……!」

あたしの言葉に、彼は目を見開いた。

……おそらく忘れていたのだろう。
次いで「そういえば」と言いたげな顔をしていた。





「ケーキ、作ってみたんだ。
 料理はそんなに得意じゃないけれど、
 生クリームはたくさん使ったから」

気に入ってくれると、思う。





「あと、一緒に手紙が入ってるんだけど……
 それは後で読んでくれる?」

さすがに目の前で読まれるのは、ちょっと恥ずかしいから。

そう言うと、彼はまた少し照れて……
そして困ったように笑って、言った。





「ありがとうございます…先生……」

なんだかあたしも嬉しくなって、笑顔で答えた。












どういたしまして



(本当におめでとう、あたしの大好きなひと。)























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これはスタスカシリーズと同じヒロインで、何気に続きみたいになってます。
まじで宮地が好きすぎる。
みんなそれぞれ魅力的だけど、最終的にこの人か錫也になるな、と思う。(オイ

てかこのSSまとめてて思ったんですが、
他の人と違って宮地だけすげー長いです。
どんだけ頑張ったのだ、自分。