「ったく、真ちゃんがキレたりすっから完全に朝練遅刻じゃねーか」
「誰のせいだと思っているのだよ!」
未だ怒りが収まらないのか、あまり声を荒げない真ちゃんが
大声でんなことを言ってきた。
「ご、ごめんね、あたしがつい寝ちゃったから……」
そんなオレらの後ろから、控えめに謝る彼女。
かなり責任を感じてしまっているらしく、今にも泣きそうだ。
「気にしなくていいって。
オレだって自分で起きなかったのが悪いんだし」
「その通りだ。
お前は何も悪くないから、謝らなくていいのだよ」
悪いのは全てこいつだ、と言いながら、真ちゃんはオレに背を向ける。
「このままこうしていては、朝練が終わってしまう。
オレは先に行く」
お前はリアカーを引いてくるのだよ、と言い残し、
真ちゃんはひとりさっさと行ってしまった。
「って、乗らねーのにリアカーは持って来いっつーのか?」
めちゃくちゃだな、と思いながら、
まあ、あれがうちのエース様か、とも思った。
「あの、高尾くん……」
未だ心配そうな顔をしながら、彼女がオレを呼んだ。
そんな彼女を安心させるように、オレは笑う。
「大丈夫だって、なんとかなるから」
それより、これ。
オレはポケットから取り出したものを、彼女に手渡す。
「鍵…?」
「そ。ウチの鍵ね」
なんで? という顔をしながらオレを見上げる彼女。
そのきょとんとした顔がかわいくて抱きしめたくなったけれど、
そこはなんとか我慢して言葉を続ける。
「オレはもう学校に行くけど、ゆっくりしてっていーよ」
まだ起きたばっかで帰るとか慌ただしいだろーし。
「で、でも……」
「どーせ夜まで誰も帰ってこないからさ」
気にしなくていーよ、と言うと、
少し安心できたのか、ようやく笑って頷いてくれた。
「鍵は後で返してくれりゃいーから」
「うん、解った」
ありがとう、高尾くん。
「じゃー、行ってくるわ」
「うん、行ってらっしゃい!」
あー、いいなこれ。
マジで新婚さんじゃん。
こんな未来が待っていれば幸せなんだろうなーなんて想像しながら、
オレは急いでエース様のあとを追いかけた。
でも、待ってるだけじゃなくて捕まえにいくけどな
(だから覚悟してろよ?)
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和成くんの格好よさ、ハンパない。まじで。
近くに居たらぜってー惚れると思う。
断言できる。