「うーん…」
あたしは今、ちょっと迷っている。
というのも、その理由は隣に居る彼にあって…。
「……」
詳しくは教えてくれなかったけれど、
用があるからと遠路はるばる京都から東京までやってきた。
そんな彼があたしの部屋を見たいと電話口で言い、
別に予定もなかったし会えるのは嬉しいので、素直に了承した。
それが、昨日の夜のこと。
「……」
そして今朝(と言っても良識のある範囲内の時間)に訪ねてきたので
そのまま招き入れたはいいんだけれど…
部屋に入ってちょっと見まわしたあと、
「僕は読書をするから君も好きにしてていいよ」と言ってソファに座り込み、
持参していた本を開きそのまま読みふけって――今に至る。
「うーん…」
本音を言ってしまえば相手をしてもらえないのが
ちょっと寂しいんだけど…年上として、それは言いづらい。
それに彼の邪魔はしたくないし、それをすれば彼も嫌がるだろう。
けど、このまま何もしないのもつまらないし…
……と、そんな考えの中であたしは迷っているのである。
「……よし」
とりあえず、先ほど彼に出したお茶がなくなりそうだから、
新しいのを用意してこよう。
まずは、それからだ。
そう思ったあたしは、さっそく行動に移った。
「……フッ」
そんなあたしを盗み見して彼が微笑んでいたことなど、
既に部屋を出ていたあたしなんかが知る由もなかった。
「さてと、」
新しいお茶は淹れてきたから、それはオッケー。
とりあえず、手が空いたこの時間をどううまく使うかだよね。
今日あたり部屋の掃除もしたかったんだけど、
それこそ読書の邪魔になりそうだから却下。
本棚の整理整頓も同じく。
「と、なると……」
あたしもあんまり動かずにできることか…
「ルールのおさらいをしてようかな」
少し前からルールブックを見始め、ルールをきちんと覚えようと意気込んでいるあたし。
よく解らないことはみんなに聞いたりして、徐々に細かいところまで覚えてきたところ。
「えーと、昨日はここまで読んだから……」
今日はここからだね。
意気込みながらルールブックを開いたはずが…
そのルールブックが手の中から消えてしまった。
――この部屋には今、あたしと彼しか居ない。
ということは、彼の仕業…ってことになるんだけれど。
「あの…本はいいの?」
隣に居る彼を見やると、目が合った。
あたしから奪い取ったルールブックを持って、至極楽しそうな笑みを浮かべている。
「別に構わない。大して読んでもいないしな」
「えっ…?!」
大して読んでなかった…?
な、何それ…!
「部屋まで押しかけてきたのに、僕がそっけない態度を取ったら
君はどうするかなと思ってね」
君の行動が見てみたくて、本を読みふけっているフリをした…
とのことだ。
や、やられた…。
あたしは彼の罠にまんまとハマってしまったことが
ちょっとだけショックだった。
「構ってほしいとすり寄ってくるか、遠回しに相手をしろと言うのか、
はたまた何か邪魔になるような行動に出るか…」
彼は彼で、あたしの行動を予想して楽しんでいた…らしい。
「けど君は予想に反して、僕に直接何か言うわけでもなく
お茶を淹れたてのものと替えたり自分なりにやりたいことをし始めたり…」
――やっぱり君は、僕が見込んだ女性(ひと)だね。
そう言って普段見せないような柔らかい笑みを浮かべたので、
なんだかちょっと照れくさくなって俯いた。
それでひとつ、疑問があるんですが
(ルールブックは返してもらえるのかな…?)
(僕が君に構ってほしいから、僕が帰るまでは没収)
(えっ…!?)
+++
解んないでしょうけど、いちおー赤司くんですよ…!
初書きなので、いろいろ怪しい。口調とか…。
でも、赤司くんもいろいろ書いてみたら面白いと思います、たぶん。
キャラをつかめてきたら、洛山メンバーでの夢とかもいいですね!