「おーい!」
買い物帰りの道すがら、誰かを呼んでいる声が耳に入ってきた。
けど、たぶんあたしではないだろうと思いそのまま歩き続ける。
「ちょ、ちょっとひどいっスよ、無視するなんて!」
とんとん、と肩を叩かれながらそう言われる。
呼んでいたのは、あたしのことだったのか。
いや、それよりも……
「黄瀬くん……!?」
どうして黄瀬くんがここに!?
そもそもこんな時間(お昼過ぎくらい)にどうした。
今日は平日で学校もあるはずだが。
「今日は学校の都合で、授業は午前中だけなんスよ」
思っていることが顔に出ていたのだろうか。
黄瀬くんはにこっと笑ってそう言った。
「今日は君の誕生日でしょ?
だからお祝いしに来たんス!」
「え、……」
わざわざ神奈川から東京まで?
「他でもない、君の誕生日っスからね」
そうですか……。
なんだか照れくさくなってしまい、あたしはうつむいた。
「後から笠松センパイたちも来るんスよ」
「まじですか……」
みんなを巻き込んできたのか。
でもなんで一緒じゃないんだ?
とゆうか、学校が早く終わったなら部活をやるべきでは?
「オレは早く君に会いたくて、駅からダッシュで来たから」
黄瀬くんは、最初の疑問にだけは答えてくれた。
「でも、来るなら来るで先に連絡してくれればよかったのに」
そうしたら、駅まで迎えにいったのに。
「こーゆーのはサプライズが基本でしょ?」
「まあ、そこは否定しないけど……」
実際あたしは驚いたわけだしね。
「それとも……もしかして用事あるんスか?」
黄瀬くんがちょっと悲しそうな顔をして言う。
……ああ、もう。
そんな顔をされたら、もうとやかく言えないではないか。
「……ううん、何も用はないよ」
今だって、スーパーでちょっと日用品を買ってきただけだし。
「良かったっス!!」
きらきらした笑顔で黄瀬くんは言う。
本当にイケメンはこーゆーとき得をするな。
そんなどうでもいいことを考えた。
「あ、センパイたちが来たみたいっスね」
行こう、と言いながら、あたしの手をひいて走り出す黄瀬くん。
「ちょ、ちょっと!」
確かに用はないけど、せめてこの買い物袋を
家においてくるくらいの時間はほしい!
そう言うと、黄瀬くんはまたあの笑顔で
「了解っス!」と答えるのだった。
きみは きらきら光る宝石のよう
(けれど 宝石よりもずっと綺麗だ)
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ブログ掲載SSの再録です。
自分の誕生日を自分でお祝いした、哀れな(?)作品。
でも、黄瀬にお祝いしてもらったらすごくいいと思う。
海常メンバーみんな好きなので、できれば全員で。
笠松センパイのみんなへのツッコミを生で見たい気もします。
とにかく、黄瀬に祝われたら幸せだと思います。
最高。