「先生!」

その大きな背中に、あたしは思い切り叫んだ。
そして、同時に走り出す。






「私はここに居るのだから、慌てずに来なさい」

少し苦笑を漏らしながら、そう言う。
でも、あたしは構わず駆け寄っていった。

あたしが言うことを聞かないというのは、よっぽどのことでない限り無いので、
先生は怪訝そうな顔をしてこちらを見る。














「……どうしたのだ?」

そんなあたしの様子に、何かあったのかと思ったのだろう。
纏う空気が、変わった。







「なんでも……ないんです」

ただ、






「ただ?」

「今、少し…うたた寝をしてしまったんです。
 そのときちょっと、嫌な夢を見て……」

「……」

先生は、何も言わずあたしの話を聴いてくれる。













「彼女はおろか、誰も……
 ひとりとして、助けることが出来なかった夢です」

あたしは、みんなを、彼女を助けたくてここに来たのに。
それが何一つ出来ず、ひとり絶望している夢だった。












「……」

「……よく聴きなさい」

しばらく黙りこんだあたしに、先生が優しく声を掛けてくれる。






「お前は、多くのものを救った。
 人だけではない、この町も、世界も」

あたしは何も言えず、ただその言葉を聴いている。






「お前に救われたものは、多い。
 今この世界に居る人々が笑っていられるのが、何よりの証拠だ」

本当にそう、だろうか。








「あたしは……彼女の、助けになれたでしょうか」

先生の話を聴き終え、あたしがそう問いかけると。
















「ああ……もちろんだ」

先日も、訪ねた我々を快く迎えてくれただろう。
それが、何よりの証拠というもの。








「よか、った……」

あたしは、あたしは……
彼女の力に、なれていたんだ……



本当は、それがずっと心配だったのかもしれない。

こうして世界は平和になったけれど、
彼女も無事に生きて大切な人と過ごせているけれど、
本当にあたしは、力になれたんだろうか。

本当にあたしが、ここに来た意味があったのだろうか……。



だけど、もうそのことで悩むこともないだろう。
夢に見て、うなされることもないだろう。











「心配はいらない」

あたしの大切な人が、こうして言ってくれるだから。




































数多のものを救ったその手



(お前は、自分を誇るべきなのだ)























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リズ先生です!
何気に書いたの2度目。
未だに口調とかよくつかめていない……(オイ

でも先生好きです。
あんな人に弟子入りしたい。(何