「みんな忘れ物ないわね?」

「じゃ、帰んぞ」


ふたりの声に従い、部員全員がぞろぞろと歩き出した。







「いい試合だったね、カントク」

「ええ、そうね」


今日は近くの学校で練習試合を行った。

……一体いつ試合の約束を取り付けてくるのかは解らないけれど、
とにかく経験を積ませたいという考えなのか、
ここのところ割と頻繁に行われているのだった。

今日の相手もけっこう強豪だったんだけれど、初心者のあたしから見ても
いい感じで勝つことが出来たと思う。











「なぁ、カントクー。
 これからみんなでマジバ行かね?」

「いいわねー!」


そう言いながら、カントクは集団の前のほうに行ってしまった。

あたしはこのメンバーで移動するとき割と後ろのほうに居るので、
自然と距離は離れてしまう。
…まあ、それがどうってわけでもないんだけれど。






「……」


そして、同じようにこのメンバーで移動すると必ず最後尾に居る彼。
何か言葉を発するわけでもなく、黙々と歩いている。

そんな彼に、あたしは他のひとには聞こえないよう小声で話しかける。








「あの……」

「? どうしました?」


きょとんとした顔で問いかけてきた。
それがちょっとかわいくて言葉に詰まったが、なんとか続きを話す。






「その、ちょっと話したいことがあるんだけど……
 ふたりで、違う道から帰れないかな?」


出来れば、みんなに気づかれないように……。






「……」

彼は何も言わない。


もしかして、突然こんなことを言って引かれたとか……。

不安が押し寄せてくるが、次の言葉がそうではないことを教えてくれた。












「いいですよ。
 じゃあ、今のうちに行きましょうか」

「う、うん…!」


良かった、嫌悪していたわけじゃないみたい。
安心してほっと息をつき、道をそれた彼に続いた。





















「あの、それで話というのは……」

「う、うん、話ってゆうか……
 これ、渡したかったんだ」


どうぞ、と言って、持っていた紙袋を手渡した。
不思議そうにする彼に、あたしは説明する。







「それ、……プレゼントなんだ」

お誕生日、おめでとう。







「知ってたんですか……」

「うん、ちょっととある筋からね」


ぼかしたつもりだったんだけど、彼はすぐに解ったようだ。
「ああ、彼女ですか」と、簡単に返されてしまった。











「と、とにかく、……おめでとう!」


大切なあなたの生まれた日をお祝いできて良かった。

そう言うと、たまに見せるあの優しい笑みを浮かべて答えた。




「ありがとうございます」

























大切なあなたに祝えてもらって良かった


(本当に、心からそう思います)





























+++

黒子っち、おめでとう!
こーゆー雰囲気のひと、すごく好き。
癒される。