「ねーねー、お菓子ちょうだ〜い」

「さっきあげたばっかりなのに……
 まあ、いいや。どーぞ」

あたしは手元にあったコンビニの袋から、ポッキーを取り出して渡した。






「ありがとう〜」

隣に居るのは、2mを越える長身の男。

だけどそれが可愛く思えてしまうのは、たぶん……
このお菓子好きなところが理由だろうな。














「それ新商品なんだけど、おいしい?」

「うん、さっきのもおいしかったけど
 これもおいしいよ〜」

「そっか、よかった」

じゃあ、今度は自分の分で買おうかな。







「はい」

つぶやいた後、目の前に突然ポッキーを差し出された。






「え?なに?」

わけが解らず聞き返してしまう。










「君にあげる」

「え、」

あげるから食べて、ということらしい。












「でも……
 それはさっき、あーちゃんにあげたお菓子なんだから」

だから、あなたに食べてもらわないと。
何のために買ったのか、解らなくなってしまうではないか。







「いいの〜、君にあげる。
 おすそわけ」

「けど……」

そう言われても、手は出しにくいものだが…。






「おいしいもの、君といっしょに食べたいから。
 いっしょに食べて、『おいしいね』って言いたい」

「あーちゃん……」

ああ、そうだね。

君は本当に……
どうしてそういうことを、さらっと言ってしまえるのかな。
















「じゃあ…もらうね」

「どうぞ〜」

差し出されたポッキーをひとつ、食べてみた。
新商品のそれは、季節限定の和栗味。

なるほど、確かに栗の味だ。







「おいしい……」

「ね、おいしいでしょ〜?」

「うん、おいしい!」

そのポッキーはふたりで食べたから、すぐになくなってしまった。

















「ねー、お菓子……」

「はいはい、まだあるよ」

君の扱いなら、手慣れたものだと自分でも思う。
お菓子のストックは、これでもか!というくらい持ってきているから。







「……あ、そうだ」

あたしはそこでふと思い出し、
コンビニの袋ではなく自分の鞄の中をあさる。







「どうしたの〜?」

そんなあたしの行動が気になったのか、そう問いかけてきた。














「はい、これ!」

不思議そうにするその人に、
あたしは鞄から取り出したお菓子詰め合わせを手渡す。






「すご〜い」

「でしょ?」

「でも、なんで?」

詰め合わせが出てきた意味が、解らないようだ。
きょとんとするその人の頭をなでて、あたしは言う。






「誕生日だかから、トクベツ」

「トクベツ……」

「そ。
 トクベツに詰め合わせだよ」

おめでとう、あーちゃん。
これからも、あなたの隣にいさせてね。












「……ありがとう」

珍しく、照れたように笑っていた。
















きみしか いらない




(となりには、きみだけでいい。)




























+++

ブログ掲載SSの再録でした。
紫原の誕生日だったということで、書いてみたもの。
初書きのうえにキャラをまだつかめていないので、口調とか謎。

今回「あーちゃん」というあだ名を使いましたが、
本来あたしはこーゆーあだ名は好きじゃないです。(何
でも、今回はあえて。

最近あーちゃんがかわいく思えてきたあたしです。
でっかい子どもなんだと思う。結局。