「おはようございます、お迎えに上がりました」
そう言って朝いちばん、その人は部屋にやってきた。
「おはようございます!
ずいぶんと早いんですね」
「それは、……
ご迷惑でしたでしょうか」
なんとなく気になって問いかけただけだったのに、
悪い意味でとらえてしまったらしい。
そんな彼に、あたしは慌てて補足する。
「いえ、そうじゃないんです!
ただ、なんとなく気になっただけで」
咎めているつもりは、全くないんだけれど…。
「そう、ですか…」
「はい」
頷き返すと、少しほっとしたような顔をした。
そのことに、あたしもほっとする。
「昨日頂いた文によると、
どこかお出かけになりたいということでしたが……」
「はい、そうなんです」
「どちらへ行かれますか」
そう問われて、あたしは迷わず答える。
「あなたの行きたいところへ、行きたいんです」
「私の、ですか?」
「はい!」
あたしの言葉に、その人は困ったような顔をした…
……というか、実際に困っているんだと思う。
「どこでもいいんです。
あなたの好きな場所とか、いつも行っている場所に連れて行ってください」
すると、その人は少し悩んでから言葉を発する。
「では……
どこか、景色のいい場所へお連れしましょう」
「はい!」
「今の時季でしたら、紅葉も見ごろかと思います」
紅葉か……
楽しみだな!
「じゃあ、行きましょうか!」
「かしこまりました」
立ち上がった彼に続き、あたしも立ち上がる。
手には、小さな巾着を持って。
「そちらのお荷物は…」
「うん、ちょっと必要なものなんです」
とゆうか、大切なもの…かな。
あなたへの、プレゼントだから。
「お持ちいたしましょうか」
「いえ、大丈夫ですよ」
そんなに重たくないし、と、
あたしいはごまかすように言った。
「お足元にお気を付けください」
「ありがとうございます」
館の段差があるところで、それとなく手を引いてくれる。
ちょっと気恥ずかしいけれど、嬉しくもあるのだ。
「わあ、いい天気……!」
お出かけ日和ですね!
「ええ……
そのようですね」
そう言った顔が、とても優しかったから。
あたしもまた、自然と笑顔になった。
いつも守ってくれるあなた
(そんなあなたの生まれた日に 一緒に居たいから)
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ブログ掲載SSの再録でした。
頼忠さんの誕生日に書いたのですが、もちろん初書き。
キャラが違ってはいないか、心配です。
ゲームをやるたびに好きになっていくのが、頼忠さんでした。
とある立ち絵が好きすぎるんです。格好いい。