「なあ、侑士を一言で表すとしたら何だと思う?」



隣の席に座る岳人が、そう問いかけてきた。
あたしは、うーん……と考え込む。





……あ、ちなみに今は補習中。
あたしは別に補習じゃないんだけど、岳人の補習に付き合ってるってゆうか……
まあ、簡単に言えば見張りって感じかな。



正直それも面倒だったんだけど、跡部の命令じゃね。
仮にも部長の言葉だから、マネージャーとしては従っとかないと。










「そうだなぁ……侑士を一言で言うと、」

「一言で言うと?」

「ホストって感じ?」

「ホストかよ!!」



あたしの答えに、岳人が間髪入れずつっこんだ。
キレのあるツッコミに感心しつつ、あたしは続ける。










「ほら、なんか色々手馴れてそうじゃない」

「ま、まあ、解らなくもないけどさ」

「でしょ?」



立ってるだけで色気ムンムンの男なんてそうそう居ないしね。





…………いや、あの俺様部長も負けてないか。


なんて、そんなことはどうでもよくて。










「でも、どうして突然そんなこと聞いてきたの?」

「いや、なんか……クラスの女子が、そんな話しててさ。
 侑士を一言で表したら、『騎士』とか言ってた」

「騎士〜?
 あいつはそんな真面目じゃないよ

「俺もそう思う」



騎士って、守る相手(たとえばお姫さまとか)を必死に守るってイメージだけど
それと侑士が結びつくとは到底思えないな……。





あたしが微妙な心境になっていると、岳人が「うわ」とつぶやく。
どうしたのかと思ってその目線の先を見てみると、そこには侑士が居た。










「ゲッ」

「ゲッってことはないやろ、ひどいなぁ」



あたしも思わずそう言ってしまったが、
侑士にしてみればやはりあまりいい気はしなかったようだ。
わざとらしく傷ついたフリをしてそんなことを言った。











「侑士、お前……いつからそこに?」

「盗み聞きなんていい趣味じゃないよ」



だが、そんな侑士の演技にいちいち反応するあたしたちではない。
今一番気になっていることを、それぞれ口にした。










「いつって言われてもなぁ……最初から、としか言えへん」

「最初からって……ほんと趣味悪りぃぞ、侑士!」

「何とでも言え。自分らかて妙な話しとったやん」

「ぐっ……
 お、俺、このプリント提出してくるから!」



分が悪くなった岳人は、そのまま教室を飛び出してしまった。













「あーあ、岳人かわいそう」

「人のこと影で色々ゆうとったんやから、おあいこやろ?」

「そうかなぁ……」



精神的ダメージで言えば、岳人の方が上のような気がする。
そうも思ったけれど、標的が自分に変わるのも嫌だし
あたしはとりあえず黙っていることにした。















「それにしても『ホスト』やなんて、ひどいなぁ自分」

「そう言われてもおかしくない侑士が悪い」

「手厳しいことで」



そんなことを言っているが、あまり参っている様子はない……が、
案外繊細なところのあるこの男は、ほんの少しショックを受けているだろう。


だから、あたしは最後に付け加える。









「大丈夫、侑士が実は健気で一生懸命だってこと知ってるから」



あたしのその言葉を聞いて一瞬目を丸くした侑士だが、
その顔はすぐに苦笑に変わった。










「……やっぱ、自分には敵わんなぁ」

「当たり前でしょ?」



なんたって、あたしはあんたの彼女だからね。
























そう言い切った彼女には





(いつまで経っても勝てないままやねん)