「おはよう、エリク」
「おはよう」
朝起きて一階に下りると、先に起きていたらしいエリクがいた。
「ティアナは?」
「ティアナは、ルシアを起こしに行ったよ。
アルフレートが起こしても全然起きないから、自分が起こしてみるって」
「そっか」
ルシアも別に、朝がダメってわけじゃなかったと思うけど……
昨日、夜更かしでもしてたのかな。
あたしはそんな風に考えながら、エリクのそばに寄る。
「ねえ、あとの二人は?」
「マティアスは向こうで難しそうな本を読んでるよ。
アルフレートは、庭で腹筋してる」
なんか、いつもと変わらぬ光景って感じだ。
「それで……エリクは食事の準備してるんだ?」
「うん」
「じゃあ、あたしも手伝うね」
「ありがとう!」
鍋からスープをよそったりしているエリクにそう言って、
あたしもナイフやフォークを準備し始めた。
ひょんなことから、このティアナの家で暮らすことになったあたし……
前から見知っていた人たちとは言え、実際に会って話してみるとけっこう個性豊かで。
最初は、なかなか打ち解けられなかったような気もする。
……まあ、今は普通に接することが出来てるから、別にいいんだけどね。
「は〜、眠みー……」
「あっ、ルシア、やっと起きたんだね!」
「朝寝坊なんて珍しいよね、どうしたの?」
「どうもこうも……
すっげー嫌な夢見てよく眠れなかったんだよ」
嫌な夢?
「それって、どんな夢なの?」
ルシアの後ろから続いてやってきたティアナがそう聞いた。
「どんな、って……
俺以外みんな呪いが解けてて、俺だけアヒルのままっていう夢」
た、確かにそれは嫌な夢かもしれないなぁ……
そんな風に思っていると、後ろから声を掛けられる。
「腹が減った。そろそろ飯にするか」
「マティアス!」
「エリク、アルフレートを呼んでこい」
「うん、解った!」
そうして全員が揃ったところで、あたしたちは朝食をとり始めた。
「ティアナ、あたしちょっと買い物行ってくるね」
「うん、解った」
朝食を食べ終えて少ししたとき。
あたしはティアナに出掛ける旨を伝えた。
「ねえねえ、僕も一緒に行っていい?」
あたしとティアナの間に入ってきたのは、エリクだった。
目をキラキラさせて、「ダメ?」ともう一度聞いてきた。
「ダメじゃないよ、一緒に行こっか」
「うん!」
「気をつけてね、二人とも」
「解ってるよ、それじゃあ行ってきます」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
玄関まで見送ってくれたティアナに手を振り、あたしはエリクと共に歩き出した。
「でも、なんで突然ついてきてくれたの?」
「うーん……君と一緒に居たかったから」
「え!?」
「ふふ」
な、なんだろ……
エリクは、どういう想いで今の言葉を口にしたのかな。
「ほら、早く行こう」
「え、あ、うん」
そうして、いつの間にかあたしはエリクに手を引かれていた。
なんかこれ、すっごく恥ずかしいけど……
でも、それ以上に嬉しいかも。
そんなことを考えながら、あたしはエリクの手をぎゅっと握り返した。
こんな穏やかな日々を、ずっと
(君に過ごしてほしいんだ)