『お前には期待してるからな。頑張れよ』
『頑張って木ノ葉をよくしてくれ!』
『頑張ってくれな!』
みんなは、あたしに「頑張れ」って言う。
期待してくれるのは嬉しいしありがたいと思うけど、
ときどきそれが息苦しくなるときがある。
「頑張るって、いったい何……?」
どういうことを、「頑張る」って言うの?
解らない…………。
『お前は十分頑張ってんだから、もうこれ以上頑張るな』
これまでに一人だけ、あたしに「頑張るな」と言った人が居た。
その人は何事も面倒だと言ってやる気がなさそうだけど、
常に相手のことを考えて行動しているということ、あたしは知っている。
『頑張らなくていい』
あなたがそう言ってくれる理由は、解らない。
だけどあたしは、あなたが優しいってことだけは解ってるよ。
「おはようさん!」
「あ、おはようございます、おじさん」
綱手様のところへ行く途中、
お世話になっている食堂のおじさんに声を掛けられた。
「また任務かい?」
「はい、おそらくは」
「そうか!頑張ってくれよ!」
――また言われてしまった、「頑張る」という言葉。
「は、はい……頑張りますね!」
「おう!」
表面上では、いつもこう答える。
だけど、正直「頑張る」ということがよく解らない。
今のあたしは、頑張ってはいないの?
自分の精一杯を出しているのに、それでも足りないの?
「頑張る」って、何なの?
やっぱり解らない…………。
「ここにいたのかよ」
そう言われて振り返ると、
いつものように面倒そうな顔をしたシカマルが立っていた。
その口調からして、きっとあたしを捜していたのだろう。
それが解ったから、あたしは言葉の続きを待った。
「綱手様が、お前にこれ渡してほしいってよ」
「綱手様が……?」
今から向かうところだったのに、どうしたんだろう。
不思議に思ったが、とりあえずあたしはその文を開いてみた。
「……!」
そこには、たった三行の文章があって。
でも、そのたった三行により、あたしは衝撃を受けた。
“お前は頑張りすぎだから、少し休め。
私のところまで来る必要もない。
今日はそのまま、休日を満喫してこい”
『お前は十分頑張ってんだから、もうこれ以上頑張るな』
……ああ、あの日のシカマルと同じことを、綱手様もおっしゃってくれている。
たったそれだけのことなのに、あたしは救われた気がした。
「……で、俺はお前がちゃんと休んでるか見張ってこいって言われてな」
めんどくせぇ、と、いつものようにそう言ったシカマル。
だけど、心からそう思っているわけではないこと、あたしは解るんだよ。
「休日を満喫してこいって……一体どうすればいいんだよ」
シカマルは、少し困った顔をした。
だけど、それがなんだか面白くて、あたしは笑ってしまう。
「とりあえず……昼寝でもするか?」
「うん……そうする」
「頑張る」ってこと、どういうことか未だに解らない。
でもね、あたしはシカマルの優しさは解っているから、それでいいんだ。
あたしを解ってくれた綱手様にも、後でお礼を言わないとね。
そんなことを考えながら、
あたしはシカマルと共にお昼寝をする場所へ向かうのだった。
そのままのお前でいいから
(もう頑張るなよ)