「こんなところで何してんだぁ?」
あたしが芝生に寝転がっていると、スクアーロが声をかけてきた。
あたしを捜していたのだろうか。
でも、あたしは今日休みをもらっていたから、
きっと任務のことじゃないんだろうけれど。
そんなことを考えながら、何か用があるのかとあたしは声を出さずに目で聞く。
「別に用はねぇ」
「ふーん」
用がないのなら、偶然通りかかったってところかな。
あたしは勝手に自分の中でそう結論付けた。
「お前、今日休みだろ」
「うん」
「いつもはりきって出掛けるくせに、今日は昼寝かぁ」
「うん……」
そうだ。
あたしはいつも、休みの日になるとどこかに出掛ける。
買い物も好きだし、何かと歩き回るのも楽しいから。
だけど、今日は違う。
何処にも行きたくなかった。
――違う、何処にも行く気になれないんだ。
何故かと聞かれても、自分でも答えられない。
でも、どうしても外に出る気になはなれなかった。
「……本当はね、買い物に行かなくちゃとか、
色々やらなきゃいけないことはあるんだ」
「そうかぁ」
「うん……でも、なんかやる気になれなくて。
だから、今日は出かけずに何かやろうかとも思ったんだけど」
趣味だって何だって、やりたいことだってたくさんあるはずなのに。
どうしても、やる気になれない。
「……違う、やる気になれないわけでもない。
やる気はあるのに、身体が動かないんだ」
なんで。どうして。
どうしてあたしは、動けないの。
「…………」
ずっとあたしの話を聴いていたスクアーロは、黙り込んでしまった。
何を言うでもなく、ただじっと、あたしの言葉を待っているように見える。
「スクアーロ……あたしは、何かおかしいのかな」
おかしいから、身体がいうことを聞かないのかな。
別に、何か病気だというわけでもないのに、どうして。
どうして、あたしは…………。
「…………別にいいんじゃねぇかぁ」
「え……?」
うつむくあたしに、スクアーロが言う。
「休みだからって、何かする必要もねぇしな。
俺はただ、お前の様子が変だったから
出掛けねぇのかって聞いただけだぁ」
出掛けてこいと、無理強いしているわけでもない。
スクアーロは、そう言った。
「たまには、こうしてぼーっとしててもいいだろ」
「スクアーロ……」
そっか、そうなんだ。
別に、絶対に何かしなくちゃいけないわけじゃないよね。
何もしない日があっても、いいよね。
焦らなくて、いいよね。
スクアーロは、きっとそういうことを言いたいのだろう。
それが解ったから、あたしはそれ以上何も話さないでいた。
ただ黙って、そのまま芝生に寝転がっていた。
スクアーロだって暇じゃないはずなのに、
あたしが部屋に戻ると言うまであの後もずっと傍に居てくれた。
――ねぇ、そんなあなただから。
あたしはあなたに惹かれるのかな。
今度、スクアーロに直接そう言ってやろう。
きっと、顔を真っ赤にして意味もなく怒鳴るに違いない。
そう考えると、なんだか楽しくなってきて。
先ほどまでの鬱々とした想いは、いつの間にか消え去っていた。
あたしの心の闇を洗い流すのは
(マフィアであるあなただなんて、)