「あなたは、僕がどんな人間なのか知らないんですよ」


そばに置いてほしいと、そう言った。
返ってきた言葉は、拒絶を表すもの。



――否、そうではない。
それは誰かを、あたしを……自分を護るために口にした言葉。





誰かを傷つけたくないから、遠ざける。
あたしを傷つけたくないから、遠ざける。
自分が傷つきたくないから、遠ざかる。








あの人は、いつもそうだ。
強いようで、どこか弱い。
全てを解決して、自分も生き抜こうという強い意志は無い。


他を救えるのなら、自分が犠牲になる。
そういう考えばかりしているのだ。



あたしは、それが嫌でそばに置いてほしいと言ったのに。
あの人は聞いてはくれない












「僕には、あまり関わらない方がいいですよ」


そう、言われたけれど。



それで諦めるあたしじゃない。





「あまり」ということは、全く関わってほしくないわけではないのかもしれない。
本当は、そばに居て自分を解ってほしいのかもしれない……。


だからあたしは、またあの人に言った。










「あたしを、そばに置いてください。 置いてくれるまで、絶対諦めない」


あなたの悲しみを、苦しみを、喜びを、怒りを。
あたしにも、分けてほしいよ。


あなたのことが、好きだから。





全て伝えたあとのあの人は、しばらくぽかんとしていたけれど。












「…………どうやら、あなたには敵わないようですね」


そうでしょう。
だって、相手はこのあたしなのだから。


冗談で言ったその言葉に、あの人は笑ってくれた。








そうやって心から笑ってほしいから、あたしはあなたのそばにいるよ。
その手を引いて、歩んでほしい平和な道を無理やりにでも歩かせる。











あたしはそういう人間だから、覚悟しておいた方がいいよ。



そう言うと、あの人は「心得ておきます」とだけ言った。


































強引だっていい





(あなたを救えるのなら)