「沖田組長!
どこに居るんですが、沖田くみちょ……!?」
どたーん!!
組長、と言い切る前に、私は何かに足をとられそのまま前に倒れこんだ。
自分で言うのもなんだけど、倒れたときにものすごい音がして。
ちょうど庭先で洗濯物を干していた千鶴ちゃんが、慌ててこちらにやって来る。
「だ、大丈夫ですか!?」
「う、うん……大丈夫だよ」
正直顔から倒れこんだので相当痛かったけれど、
彼女を必要以上に心配させては、と思い、私は痛いのを我慢してそう答えた。
「それならいいんですが……気をつけてくださいね」
「うん、ありがとう」
お礼を言うと、千鶴ちゃんも洗濯に戻っていった。
「そういえば……」
私がつまづいたのって、一体なんだったのかな。
そう思って辺りを見回してみると、何か小さな箱のようなものが置いてあった。
「何だろう、これ」
よく見てみると、何か文字が書いてある。
「えーと……石田、散薬?」
これって……
「間違いなく斎藤組長のだよね……?」
微妙な心境になりつつも、私は何も見なかったことにしてその場を離れた。
「てゆうか、早く沖田組長を見つけないと……」
そうして再び歩き出そうとしたのだが、
今度は急に方向転換したのがいけなかったのか、自分の足につまづいてしまった。
さっき千鶴ちゃんに気をつけてって言われたばかりなのに……!
「…………あれ?」
そろそろ来るだろうと覚悟していた痛みや衝撃は、一向にやってこない。
それどころか、なんかあったかいっていうか……
「君って、本当ドジだよね」
「お、沖田組長!」
声がして見上げてみると、そこには沖田組長の顔があった。
どうやら、再び転びそうになった私を組長が支えてくれたみたいだ。
「あ、ありがとうございます、沖田組長!」
「全く、これ以上僕の仕事を増やさないでよ」
少し苛立たしげにそう言った組長だけど、
むしろいつも土方副長の仕事を増やしているのは組長、あなたです。
…………そう言いたかったんだけど、後が怖いので私は黙っていることにした。
「あ、あの、沖田組長。
私と組長に、土方副長から命が下ってるんですが」
「土方さんから?めんどくさいなぁ、もう」
そんな畏れ多いことを口に出来るのは、沖田組長だけなんじゃないかな……。
そんなことを考えていた私に、沖田組長は言う。
「本当はめんどくさいんだけど、ドジな君一人に任せるのもね。
じゃあ、さっさと終わらせよっか」
「は、はい」
見た目は本当に面倒そうにしてるけど、きっと私のことを心配してくれてるんだろうな。
沖田組長は、優しいから。
その優しさに気付きながらも、それを言うと組長ははぐらかすから
私はまた黙っておくことにした。
本当は優しいあなた
(そんなあなたが 私は好きなんです)