『居場所が解らないの。サスケくん、何か知らない?』















サクラからそう聞いた後、俺は何となくあいつの姿を捜していた。
別に、あいつがふらっと居なくなることなんて日常茶飯事だから、
そんなに焦って捜す必要なんかない。





『あっ、急ぎの用ってわけじゃないから、知らないなら大丈夫!』



サクラのその言葉からも、それは解ることだ。










だが、今日は違った。
俺はいつの間にか必死になってあいつを捜している。



……何故、と聞かれれば。
嫌な予感がしたからだ、としか答えられない。





とにかく……俺は、あいつの姿をずっと捜している。
このまま会えなければ、きっとこの不安は消えない。










「どこに居るんだ…………」




















そうして君は 僕の前から消えゆく




















「この声は……」



どこからか歌が聞こえてきた。
耳を澄ませてみると、それはすぐそばの建物の屋上からだと解った。



聞き覚えのある、その声。
間違いない、この声は。





ずっと、俺が捜していたやつの声だ。















そうして君は 僕の前から消えゆく

あたしがどんなに 行かないでと言っても

あたしがどんなに 行かないでほしいと願っても

君は必ず その意志のまま動く

君は必ず、ここを離れる――――





















「そうでしょう?」

「…………何のことだ」



俺が屋上に上がったことも、気付いていたようだ。
全く音は立てず気配も消したはずなのに、
それなのにこいつは気付いた。





いつも、そうなんだ。
こいつは、誰も気付かないようなことに気付く。
それも、すぐに。















「サスケは、きっとここを離れる。
 あたしがどんなに『行かないでほしい』と願っても、
 きっとあなたは離れてゆく」

「…………」



見透かされているような気がした。
正直、ここを離れるかなんて自分でも解らないのに。



なぜか、こいつには全て見透かされているような気がしたんだ。















「今のサスケは、きっとそんなこと考えていないと思う」



でも、きっといつかそう思うときが、来るはずだ。





言葉には出さなかったが、そう言いたかったのだろう。
俺は何も言えず、黙り込んだ。















「きっと、あたしが止めてもあなたはその意志を貫く。
 それならば一つだけ、覚えていてほしいの」

「……何をだ?」















「あたしは、いつでも、ずっと、あなたを一番に想っているよ」









































――――ああ、あのとき 
俺も同じだと言えば良かっただなんて。









(今でもはもう、遅いんだ)