なんだか眠れなくて、あたしは電話を掛けた。
「宮地ー」
『どうしたんだ、こんな時間に』
すぐに電話には出てくれたけど、やっぱり不機嫌だ。
……こんな遅い時間だから、当たり前かもしれないけど。
「ごめん、なんか眠れなくて」
『俺に電話しても、眠れるようにはならんぞ』
「それはそうなんだけど」
でもさ、なんだか。
誰かの声が、聴きたかったんだ。
『……何かあったのか?』
どうして宮地には、いつもバレちゃうのかな。
「…………あのね」
ただ、なんとなく。
「なんとなく、寂しくて」
だから、誰かの声を聴きたかったんだ。
「本当は星を見たかったんだけど、見えなくて」
空は厚い雲に覆われていて。
「こんなに見たいと思ってるのに、全然見えない」
いつも溢れるくらいの星が空にはあるというのに。
どうして、見たいときに見れない。
『お前、』
「人と、同じだよね」
あたしは、宮地の言葉を遮るように言った。
「会いたいと思ったときにこそ、会えない」
こんなに会いたいと思っているのに、今は夜遅い時間。
本当ならこうして電話してくれているのもありがたいことなのだ。
「それでも、やっぱり会いたいって思っちゃうんだ。
宮地は、あたしのことを我がままだと思う?」
『…………』
宮地は答えない。
だからあたしも、ほとんど独り言のように話す。
「ときどき、ふいに考える」
やっぱり、好きだなぁって。
「そういうときにね、すごく会いたくなるんだ」
電話じゃなくて、直接会って。
顔を、見たい。
「なんでかって聞かれても、あたしも解らない」
だけど、ただ。
会いたいんた。
ただ、君に。
会いたくなるんだ……――――
『…………カーテン開けてみろ』
「カーテン?」
どうして、と聞いても、宮地は「早く」としか言わない。
仕方がないから、あたしも窓際に急ぎ、カーテンを開ける。
そして、慌てて窓も開けた。
「『お前の考えてることくらい、解る』」
あたしの視界に入った人の声と、電話から聞こえてくる声が重なる。
「なんで……」
ああ、どうして。
(君はいつも あたしの心を見透かしている)