「今日も雨か……」
梅雨だからなのだろうけれど、ここのところ雨の日が続いている。
雨が嫌いというわけではないが、星が見れないのは少し寂しかった。
「先生、何してるんですか?」
雨の降り止まぬ空を、あたしは教室の窓越しに見ていた。
聞きなれた声に先生、と呼ばれ、振り返ってみる。
「錫也……」
「こら、学校では『東月くん』だろ?」
そう決めたのは先生じゃないか、と、錫也は言う。
「…………錫也だって、敬語忘れてる」
「あ、本当だな」
少し笑い、今は二人だからいいか……
なんて、そんなことを言った。
「……それで、何してたんだ?」
初めに投げかけた質問を、錫也は再び口にした。
錫也が隣にやって来たのを見計らって、あたしも答える。
「雨が止まないな……と思ってさ」
再び目線を空にやり、降り止まぬ雨を見る。
「ずっと、星が見えない……」
それしか口にしなかったが、どうやら錫也は、
あたしが何を言おうとしているのか解ったらしい。
「ああ……確かに、ずっと雨だからな」
そう言って、あたしと同じように空を眺める。
「空に浮かぶ星は、今は見えないけどさ……
俺は、雨や雲でも隠せない星を知ってるよ」
「え……?
それって、どんな星?」
錫也の言葉が気になったあたしは、聞き返してみる。
すると、錫也やこちらに向き直って言う。
「秘密」
「なっ……なんで?」
もう一度聞いて見るが、錫也は微笑んで「秘密」と繰り返すだけだった。
「後で教えてあげるから、勘弁してくれな」
「うん……約束だからね」
「ああ」
秘密と言うからには、そんなに簡単に話せないのかも……
あたしは勝手にそう思い込んで、ひとまず納得することにした。
「あ、そうだ……
プラネタリウム、観に行くか?」
「! うん、行きたい!」
錫也の唐突な申し出に、あたしは二つ返事で答える。
「でも、勝手に使っていいの?」
「陽日先生に許可もらってきたよ。
そろそろ誰かさんが『星が見えない〜』って言う頃だと思ってさ」
そっか……錫也は全部、お見通しだったんだ。
「そうと決まれば、早く行こうよ!」
「プラネタリウムは逃げないから、そんなに焦らなくて大丈夫だよ」
あたしは錫也を急かすように、歩くスピードを上げた。
「雨や雲にも、何物にも隠すことが出来ない星……
…………それは、お前だよ」
「錫也、早く!」
「こら、あんまり急ぐと危ないぞ」
そう言ってはいるけれど、錫也も少し急いでくれた。
それが、なんだか嬉しくて。
「錫也……ありがとう」
「……どういたしまして」
いろいろな意味を含めて、そう伝えた。
隣に居てくれて、ありがとう
(あなたは あたしにとってかけがえのない星)