……――あなたは意地悪だと思う。





          「那岐、何してるの?」

          「……別に、何も」

          「またそんなこと言って……
           そんなにずっと寝てたら太るよ!」

          「…………大丈夫だよ」


          あなたは意地悪だと思う。
          そうやってまた、あなたは僕を子ども扱いする。
          今まで一人の立派な人間――男として、応対してくれたことがあっただろうか。

          ……答えは否、だ。







          「まあ、確かに那岐は太らなそうだけど……
           それはそれで羨ましいなぁ」


          その体質を交換してほしい、なんて変なことを言うものだから、
          「やだ」と即答してやった。

          そして……案の定、頬を膨らませている。










          「那岐ってさ……
           本当は優しいのに、どうしてそんなに意地悪なこと言うの」

          「さあ? なんでだろうね」


          ――意地悪なのは、あなたの方だ。

          今だって、どこか言い聞かせるような言葉で僕と話している。
          あなたにとっては、所詮僕は子どもなんだね。


          その現状にいらついているからなのか。
          僕が、こうしてこの人にきつい言葉しか返せないのは。

          ……自分で自分が、解らなくなった。















          「ねえ、那岐」

          「…………」

          「那岐ってば」


          ――ああ、うるさいな。

          そう思いながら、寝転んでいた僕は体を起こす。
          そして、隣で名を呼ぶ人と向き合った。







          「……!!」

          「何か用?」


          用がないなら、話しかけないでよ。
          僕は眠いんだ。







          「これから昼寝するから、用が無いんだったら……
           …………って、聞いてるの?」

          「あ、……」

          「……!」


          ぼっ、という音がつきそうな勢いで、顔を真っ赤に染めた。










          「ち、近い!!」


          那岐の馬鹿! と捨て台詞を残し、その人は足早に立ち去った。


          ――てゆうか、何?
          距離が近かったってこと?


          既に姿も見えなくなった人の簡潔すぎる言葉を思い出し、考える。





 
          けど、そっか。
          僕との距離が近くて、真っ赤になってたんだよね。

          ただの「子ども」にしか思っていないような相手に、その反応は無いはずだ。










          「ふああ……」


          本格的に眠くなってきたので、やっぱり今から昼寝でもしよう。







          「いい夢が見れそうだな…………」










          ……――あなたは意地悪だと思う。
          だけど、僕も少しは期待していいみたいだ。


          そんなことを考えながら、僕は意識を手放していった。















































まだチャンスは十分にあるらしい






(だったら 少しは本気を出してみようかな)