「ふうー……」
朝ごはんを食べたあと、あたしは自室で一息つきながら、
今朝の千尋の言葉を思い出していた。
『今日はみんなお休みにしましょう』
千尋いわく「みんな疲れているから」……とのことだ。
まあ、確かにあたしもそれは感じていたし、お休みっていう案はいいと思う。
でもあたし自身は平気だし、船の中を掃除でもしようかな、って考えていたんだけど……
『駄目ですよ!
一番お休みが必要なのは、あなたなんだから』
そう言われてしまい、お休みにならない状況に繋がる作業は
全面的に禁止されてしまった。
「けど、そうは言ってもなぁ」
特にやりたいこともないし、どうしよう。
でも、ずっと部屋に居るのももったいないっていうか……。
そんな風に、一日をどう過ごそうか迷っていたとき。
ふいに扉がノックされた。
すぐに返事をすると、「失礼します」という声とともに扉が開かれる。
「どうしたの、風早?」
やって来たのは、風早だった。
「ちょっと、あなたに相談……というか、提案があるんです」
「提案?」
一体なんだろう、と思いつつ、風早の言葉の続きを待つ。
「今朝……姫から今日一日お休みが言い渡されましたよね」
「うん」
「あなたは、何か予定がありますか?」
予定は特に無い。
だからこそ、今それで悩んでいたんだけど……。
その旨を風早に伝えると、「ちょうどよかった」という言葉が返ってくる。
「だったら、一緒に散歩しませんか?」
「お散歩?」
「はい」
今停泊している場所の近くに、大きな森があるらしい。
その中心には綺麗な湖があるとのことで、そこに行こうと風早は言った。
「綺麗な湖か……いいなぁ」
でも、けっこう遠いのかな?
あたしがそう聞くと、「割と近いからすぐ戻ってこれますよ」
という答えが返ってきた。
「それに……何かあれば、あなたのことは必ず俺が守りますから」
「え、あ、……ありが、とう……」
面と向かってそんなことを言われ、妙に照れてしまう。
なんとかお礼を言うと、その言葉に満足したのか、風早は嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔をまともに見てしまって、
今度は自分でも解るぐらい顔が真っ赤になってしまった。
「あなたは本当に……可愛いですね」
「ちょっ…からかわないでよ……!」
からかってなんていませんよ、と、相変わらず笑みを浮かべて言う。
――ほんと、あたしって風早に弱いよなぁ……。
「支度が出来たら、船の出入り口で待っていてください」
――俺は、二ノ姫に出掛ける旨を伝えてから向かいますから。
そう言って、風早は部屋をあとにした。
「全くもう……」
……でも、風早とお散歩か。楽しみだな。
あたしははやる気持ちを抑え、支度を済ませて船の入り口へと向かった。
あなたが居れば
(疲れなんて、簡単に吹っ飛んでしまうよ。)