「久しぶりに部活ないよなー」
「どっか寄ってくか?」
「いいねー!」
今日は珍しく部活がない。
カントクいわく「たまに息抜きも必要よ!」ということで
休みにしてくれたようだ。
まあ、別にオレたちだって嫌々バスケやってるわけじゃないから、
(むしろ好きでやっているのだ)
別に休みがものすごく嬉しいってわけじゃない。
ただ、やっぱり休みとなると放課後の時間が空くので
「あれがやりたい、これがやりたい」などという話になりがちなのである。
「じゃあゲーセン寄ってこうぜ!
伊月も行くよな?」
「あー……
悪いけど、オレはパス」
なんでだよーと口を尖らせるコガを適当にあしらいつつ、
昇降口で靴を履きかえる。
「……もしかして、あの子か?」
「ああ」
少し間を空けたあと、日向が言った。
「待ち合わせしてるんだ」
そう言うと、コガもようやく察してくれたのか、
「じゃあ、しょうがないなー」と言ってひとまず退いてくれた。
――彼女はいつも、グラウンドの隅にあるベンチに座って待っている。
昇降口を出て正門に向かう途中にあるので、そろそろ見えてくるはずだ。
「お、あれじゃないか?」
木吉がベンチに座る人物を見やり、言った。
間違いない。
あの後ろ姿は彼女のものだ。
「お待たせ」
「あ、伊月くん!」
振り返った彼女はオレを呼んだあと、
「日向くん、木吉くん、小金井くんも!」と続けた。
「今日もまたなんか読んでたのか。
本当に本が好きなんだな」
木吉が彼女の頭をぽんぽんと叩きながら言う。
「今日は何読んでたんだ?」
木吉に続き、日向が問いかける。
すると、彼女は満面の笑みで答えた。
「伊月くんのネタ帳!!」
「え……」
「マジかよ……」
日向とコガがそんなことを言った。
木吉は声には出さなかったが、苦笑いをしている。
「すごく面白いんだよ!
ね、伊月くん!」
「ああ、もちろんだ」
オレたちの会話に、三人は何も言えなくなってしまったらしい。
(何故だかは解らないけどな)
「じゃあ、そろそろ行くか」
「そうだね!
じゃあまた明日ね、三人とも!」
そうしてオレたちは、三人と別れ学校をあとにした。
「……なんであの子、あんなネタ帳おもしろいとか言ってんの?」
「いや、そもそも読書であれ読むってどーなってんだ」
「けどまあ、仲が良くていいじゃないか」
「ああ解った、もう木吉は何も言わなくていい」
「ついつい夢中で読んじゃうよね!」
(そう言った君の笑顔が 温かくて好きだ。)