「黄瀬くーん!
黄瀬くん、どこー?」
待ち合わせしていた公園にやって来たが、肝心の相手が見当たらない……
何度かケータイに電話を掛けてみたが繋がらないので、
あたしは今こうして必死に名前を呼んでいるのであった。
「場所は合ってるはずなんだけどな……」
待ち合わせ場所は、彼の学校からほど近い公園。
公園の名前も教えてもらっていて、さっき入口で確認したから間違いないと思う。
「黄瀬くーん!」
もう一度名前を呼ぶが、答えは無かった。
思っていたより広い公園だし木が生い茂っているので、見通しは少し悪い。
だから、いくら彼の背が高くて目立つといっても、未だ見つけることが出来ないのだった。
「はあ……
どこに居るんだろ」
というか、まだ着いてないとか?
部活が長引いているのかもしれない。
今日は監督の都合で部活が午前中だけって言ってたけど、
まだ終わっていないのかもしれないな。
「公園を一回りしてみて、見当たらなかったら少し待ってみよう」
向かっている途中だから、ケータイにも気づかないのかもしれない。
そう思ったあたしは、ひとまずケータイをしまって歩き出した。
「……あっ」
歩き出してしばらく、木陰で横たわる人の姿が目に入った。
見覚えのありすぎる、姿だ。
「黄瀬くん!」
もしかして具合が悪いのだろうか。
一瞬そんなことを考え、慌てて彼のもとに駆け寄る。
「黄瀬くん!
黄瀬く……」
……あれ?
すぐそばまでやって来て、あたしは気づいた。
彼は、寝息を立てている。
「と、いうことは…寝てる……?」
なんだ、そっか…
寝てるだけか。良かった……。
「全くもう、びっくりさせないでよ……」
ほっと胸をなでおろして、すやすや眠る彼の隣に座る。
「でも、そうだよね……
きっと、疲れてるんだよね」
昨日も夜遅くまで練習してたって、メールあったしな。
今日も朝から練習で、疲れてるのかも…。
それなのに、午後が空いたからって、
その時間をあたしと会うためにあててくれたのだ。
「疲れてるなら、休んでくれればいいのに……」
会う時間を作ってくれて嬉しい気持ちもあるんだけど、今は……。
「今は、ゆっくり休んでね……黄瀬くん」
きらきら光る黄金色の髪を、そっと撫でた。
木漏れ日の中で
(眠る君の隣で、あたしも目を閉じた。)