「……日向くん!」
「あ……!」
やっと来た、というような顔をして、日向くんはあたしを出迎えてくれた。
続いてリコちゃんや伊月くんたち2年生組もこちらに駆け寄ってくる。
「来てくれて良かったわ」
心底ほっとしたようなリコちゃんの言葉に、周りのみんなも「うんうん」と頷く。
「それで……一体どうしたの?」
「それが……」
――あたしがここ・誠凛の体育館に呼び出された経緯は、約1時間前にさかのぼる。
『――はい、もしもし、日向くん?』
『ああ、良かったっす、すぐ出てくれて!』
『? どうしたの? 何か大変なこと?』
『いや、それが……木吉が、変なんすよ』
『木吉先輩が……変??』
とにかく、可能ならば体育館まで来てほしい。
困惑してる様子の日向くんにそう言われ、
よく解らないままこうしてやってきたというわけである。
「確かに朝練のときから様子が変だったんだけどさぁ……
さっき部活が始まって、もう朝の比じゃねぇくらい変なの!」
小金井くんが熱弁してくる。
……日向くんも言ってたけど、その「なんか変」っていうのが
未だに抽象的でよく解らないあたしだった。
「とにかく、あなたに鉄平の様子を探ってもらいたいのよ」
頼めるかしら、と言ったリコちゃんからも、困惑する様子が見てとれる。
確かにこのままじゃみんな気になって練習に集中できなさそうだし……
あたしでどうにかなるかは解らないが、頼まれた通りやってみることにした。
「…………木吉先輩?」
「……!
お前、なんで……」
「え? えーっと……」
さすがに「様子が変」とは言いにくいな……
「あ、あの…みんなから『木吉先輩が元気ないみたい』って連絡があって。
気になって来てみたんです」
「そう、か……」
う〜ん、まだ歯切れが悪いみたいだ。
よし、こうなったら……
「はい、どうぞ!」
「…………え?」
あたしは持ってきていた一つの包みを、木吉先輩に差し出す。
急なことで訳が解らなくなっているようで、先輩は包みとあたしを交互に何度も見た。
「プレゼントです。誕生日の」
「……!」
「受け取ってもらえますか?」
あたしの言葉にハッとなった先輩が、ようやくその包みを手にとってくれた。
「あ、……ありがとな!」
「どういたしまして」
いつもの穏やかな笑みとは違う、なんだか年相応の笑みを浮かべていて。
あたしもそれにつられて、一緒に笑うのだった。
本当は、ただお前の顔が見たかっただけ
(プレゼントは二の次だったけど やっぱ嬉しいもんだな)
「……何?
もしかして木吉が変だった理由ってアレ!?」
「彼女からのプレゼントを心配してたのか」
「ま、そんなこったろうとは思ってたけどな」
「日向くんの言う通りね。
やっぱり来てもらって正解だったわ」
……なんて会話が、なされていたり。