「お嬢様!
待ってください、お嬢様〜!!」
「はあー……」
「こりゃまた盛大なため息じゃねーか」
「……あ、デビトにパーチェ!」
「やっほ〜!」
お嬢とルカのやり取りを少し離れてたところから見てたあたしに、
通りすがったらしーデビトとパーチェが話しかけてきた。
「ルカがバンビーナばっかかまってるんで、妬いてんだろ?」
「ん〜〜……まあ、それが約一割程度かな」
「え?じゃあ、後の九割は?」
間を空けて答えたあたしに、パーチェが問いかける。
「なんか暇すぎて退屈」
「ええっ!! そこ!?」(ガーン!!)
あたしの答えに対し、パーチェがオーバーリアクションをしてきた。
「ヒャハハッ、さっすが一筋縄じゃいかねー女だナ」
デビトはデビトで、あたしの言葉がツボったらしく(こいつにしては)爆笑していた。
(それもなんか、すごい失礼な気がすんだけど……)
「まァ、暇してんならイシス・レガーロにでも行かねェか?
ウチの奴らもオマエに会いたがってるしよォ」
「マジですか!それいーね!」
金貨の皆さん、見た目はド派手だけどいい人ばっかだし!
「じゃあ、おれも行こうかな!」
「そーしよ、パーチェ!
みんなでイシス・レガーロへ行……」
「待ってください!!!」
行こう、と言い切る前に、あたしの言葉は遮られてしまった。
声のした方向を見ると、そこにはさっきまでお嬢を追いかけてたはずのルカの姿がある。
「なんだ、ルカじゃねーか。バンビーナはどうした?」
「お嬢様なら、マンマからの指令でお出かけになりました」
「ルカちゃんはついていかないの?」
「……あれは、あくまで剣に宛てられた指令ですから」
私がついていくわけにもいきません、と、ルカが言う。
「それよりもです!
あなたまた、イシス・レガーロに行こうとしましたね!?」
「そーだけど、それが何よ?」
「あそこにはあまり行かないようにと、この間も注意したじゃないですか!
それなのにあなたはもう……」
と、お説教タイムが始まりそーだったので、あたしはこっそり抜け出そーとしたが……
「……待ってください。まだ話は終わっていませんよ?」
いつの間にか近づいてたルカに、がしっと腕をつかまれてしまった。
「いい機会です。
あなたには、あの場所がどんなに危険かじっくり説明して理解してもらいましょう」
「ええー!そんなのマジで要らないんだけど!?」
そんなことしてる時間があるなら、遊びたい!
それか訓練するかあたしも指令をこなすよ!!
「まあ、そういうわけです。
デビト、パーチェ、イシス・レガーロへはお二人でどうぞ」
そー言いながら、ルカはあたしをズルズルと引きずるように歩き出した……
「…………って、何のん気に見物してんだ、デビトにパーチェ!
早く助けてよ!!!」
「いってらっしゃーい!!」
「楽しんでこいヨ〜」
「話が全然かみ合ってないですけど!!!???」
それから連れ去られるまで二人に助けを求め続けたものの、
笑顔で手を振られ見送られるだけで終わるのだった。
「ったく……結局妬いてたのはルカの方ってワケか」
「だね!」
と言い合うデビトとパーチェが、楽しそうに二人を見送った。
お説教タイムが始まる
(ルカって、けっこー横暴……)(横暴でもいいです、あなたを取られるよりマシですから)(…………バカ従者)(ひどい!!!)