「……あっ、あんなとこに居た! 朽木隊長〜!!」

「…………」

用があって捜していたその人を見つけ、声を掛けたのに。
当の本人は、聞こえないふりをしてさっさと行ってしまう。





「…………今の大声で、聞こえてないわけないよね」

ということは、まあ……
簡単に言えば無視されたわけだけど。





「って、ちょっと待ってくださいよ、隊長!!」

ものすごく苦手な瞬歩を駆使し、立ち去ろうとした隊長に追いつく。

……もちろん、瞬歩なら隊長のほうがよっぽど得意だから、
本気を出されてしまえばあたしが追いつくことなど無理だ。
(つまり、追いつけるように手加減をしてくれたわけで……)





「手加減してくれるなら、最初っから待っててくれればいいのに……」

「何か言ったか」

いいえ、何も

とにかく、このままじゃ話も進まないし……と思いつつ、
あたしは一枚の書類を隊長に差し出す。





「隊長、これ恋次から預かってきた書類です。
 急ぎ隊長の承認が必要とかで、持ってきました」

中身はわかんないけど、割と重要な書類らしくて
副隊長の代わりとして第三席であるあたしが……ってなったんだよね。











「恋次はどうした」

「あー……なんか、一角さんと弓親さんと一緒に
 現世に行ったみたいですよ?虚が出たらしくって、その対応をしに」

弓親さんはともかく、恋次と一角さんってすぐ熱くなるから
なんか個人的にはだいぶ心配だけどね。





「まあ、それは置いといて……
 隊長、とりあえずこれに目を通して署名して頂けますか?」

「…………」

……あれ?
なんか隊長、書類を受け取ろうとしないんだけど……。





「隊長? どうしました?」

声を掛けてみるが、隊長はあたしの差し出した書類をじっと見つめたまま動こうとしない。
















「……名を」

「え?」

「名を、呼べ」

「ええ?」

名? 名前ってことだよね。
それで、誰の名前を呼ぶの? 隊長のでいいのかな?





「えーっと……朽木隊長?」

「そうではない」

「じゃあ、朽木白哉さん?」

「……苗字は要らぬ」

「白哉さん?」

「…………それでよい」

なんて言いながら隊長は書類を受け取り、さっさと確認してさっさと署名をした。
(てゆーか、その一連の動き、早いな!)










「これでよいか」

「はあ、まあ……ありがとうございます」

「では、私は戻る」

と言って、今度こそさっさと行ってしまった。





「え? 何だったんだろう……」

単に名前を呼んでほしかっただけ?
うーん……





「……ま、いっか!
 なんか隊長、かわいかったし♪」


































ヤキモチ焼き隊長と天然ボケ第三席




(今度から「白哉さん」って呼んであげよう♪)


























〜任務から帰ってきた三人〜



「あれって単に、僕たちのこと名前で呼んでるから自分も……ってことでしょ?」

「まあ、そういうことだと思いますけど……」

「何にしてもあの二人、相変わらずお熱いみたいだなぁ!」

「でも色々と扱いにくそうだけど……恋次もよくやってるよねぇ」

「いや、めちゃくちゃ大変なんですけど!?」


隊長と第三席のやり取りをこっそり見ていた三人が、そんな会話をしていたとか。