「先生、何をされているのですか?」
「見て解んない? 戸塚月人くん。
ロキのイタズラに備えてんの」
何度も何度もロキにイタズラを仕掛けられているあたしは、
なんだかもう、いつイタズラが来るのか察知できるようになってしまった。
(なんかすごく悲しい気がするけど、今はあえて考えないようにする)
で、今もなんだか嫌な予感がして……
こうして中庭で隠れて辺りの様子をうかがっているところに、
月人くんが通りかかったわけである。
「ロキ・レーヴァテインの一連の行動は、彼の独断だったんですか」
「いや、明らかにそうだけど……今まで何だと思ってたの?」
「先生も了承の上での行動かと」
「んなわけあるか!!!」
冷静沈着なのに盛大なボケをかましてきた月人くんに対し、
あたしも盛大につっこんでしまった。
「と、とにかく月人くん!
あたしはロキから逃げないといけないから、そろそろ…… ……!」
失礼するね、と言おうとしたところで、急に月人くんが腕をつかんできた。
「先生がロキ・レーヴァテインの行動について了承していないというのなら、
俺もこのまま立ち去るわけにはいきません」
何事かと思って腕にいっていた視線を上に向けると、
相変わらず表情を変えず(でもどこか有無を言わせないような感じで)そう言った。
「え? あの……月人くん?」
一体どういうことだろ……
「逃げましょう」
「逃げる?」
「もうすぐロキ・レーヴァテインがここに来ます。
その前に逃げましょう」
あたしが状況を把握できないうちに、
月人くんはその身に宿る力を放出していって……本来の、神の姿になった。
「って、ええっ!? なんで急に!?」
「ロキ・レーヴァテインから逃げるためには、これが一番確実ですから」
「いや、ちょっと待っ……
その姿は禁止されてるはずじゃ……!」
「やむをえません」
ええー!!
「俺の手を離さないでくださいね」
「は? いや、ちょっと、月人くん……!?」
慌てるあたしに気づいているのかいないのか(たぶん後者だ)
月人くんはあたしを抱き寄せ、そのまま宙に浮く。
「ひえぇ!」
あたしまで浮いてる……!
……なんて考えた直後には、既に遙か上空を浮遊していた。
「早っ!!」
いつの間に!?
「ここまで来れば心配ありませんね」
「え、あー……そりゃあ、まあ……うん」
確かに、ロキもさすがにここまで追ってこないだろう……たぶん。
「安心してください、先生。
先生のことは、この先もずっと俺が守りますから」
「……え!?」
なんか意味深なこと言われた気がするんですけど……!?
「もう少ししたら戻りましょう」
「ちょ、ちょっと月人くん……!」
それからというもの……
さっきの言葉について詳しく聞こうとしても、
何度も(たぶん素で)かわされてしまうのだった……。
それから数日経ったんですが
(もう今さら聞けないし……どうすればいいの!?)