「はぁー……今日の練習もキツかったよなぁ〜、真ちゃん」
「生半可な練習では勝てないからな、当たり前なのだよ」
そんなことを言い合いながら、着替えを終え帰ろうとしていると。
「…………あっ、ちょうど来た。 和成くん!」
向こうのほうから、見覚えのある人物が駆け寄ってくる。
まぎれもない、彼女だった。
「え、ちょっ……なんでいんの?」
確か、何も約束はしてなかったはずだよな……
そう思いながら、彼女に問いかけると。
「だって、今日は21日でしょ? だから」
だから内緒で迎えに来たんだよ、と、
悪戯が成功したような顔でそー答えた。
「和成くんは鋭いから、いつもサプライズがバレちゃうしね」
だから、絶対にバレないようにしてきたんだと自信満々に言う。
「いや、けど、なんで部活が終わる時間……」
そこまで言って、自分ですぐ気が付いた。
「…………真ちゃん?」
「フン。俺はただ、聞かれたことを答えただけなのだよ」
隣に居る相棒に恨みがましい視線を送るが、
涼しい顔でそう返されただけだった。
「緑間くん、内緒にしてくれててありがとう」
「いや、気にするな。また何かあったら連絡するのだよ」
「うん!」
「では、俺は帰る」
いや、つーか……
ホント真ちゃんってさ、俺の知らねーとこで連絡取り合ってるよな?
まぁ、ほとんど内容は俺についてっぽいけど……
それでも、他の男と頻繁に連絡取り合ってるのはいい気はしねーし。
「…………和成くん?」
「あー……いや、なんでもねーって」
けど、そんな余裕ないとこ知られたくないってのもあるし……
とりあえず、それについては今は考えないことにしとくか。
「んで? これからの時間、主役の俺の好きにしていーんだよな?」
「もちろん」
冗談めかして問いかけると、彼女も同じ調子で答えてくれた。
今日午前練で良かったなー、なんて思いながら、
俺は彼女の手を取って歩き出す。
「どこかに行くの?」
「んー……まぁ、テキトーにな」
まだ時間はあるし、どっか行ってもいーんだけど。
こうして一緒に歩くのもちょっといいなーって思ったり。
「……あ、そーだ!
来月さ、またあのイルミネーション見に行かね?」
「それって……前に一緒に行った、あのイルミネーション?」
「そーそー。
なんか、今年はちょっと違う演出するとかって」
今朝またニュースでたまたま見たんだよな。
「そうなんだ……うん、行ってみたいな」
「よっし、決まりな!
後で予定立てようぜ」
「うん!」
――君との約束がまたふえたな。
どんなサプライズやプレゼントよりも、俺にとってはそれが一番嬉しいんだ。
そう言うと君は、嬉しそうに笑った。
(お誕生日おめでとう、和成くん)
(あぁ、ありがとな)