「……あっ、青峰くん!」


買い物に出かけた帰り、街中で偶然、青峰くんを見かけた。

同じ都内に居るはずなのに、鉢合わせたのは初めてで。
なんとなく嬉しくなって、その名を呼ぶ。





「ああ、お前か」


すると彼も、ごく普通に返してくれた。










「部活の帰り?」

「ああ」


時間帯から推測するに、そう考えるのが妥当だった。

だけど、そばに目立つピンクは見当たらず……
どうやら今日は一人らしい。





「さつきちゃんは?」

「あー、さつきなら、
 なんか用があるとか言って先に帰ったけど」

「そうなんだ」


さつきちゃんとも会えたら良かったな、と思いつつ、
まぁまた機会があるよねと結論づけることにした。










「ところで青峰くん、
 今から何か食べていこうって感じだったでしょ」

「おー、さすが解ってんな」

「やっぱり!
 どこ行くつもりだったの?」

「んー……やっぱマジバか」


そっか……





「あたしも一緒に行っていいかな?
 奢ってあげるから」

「ああ、そういうことなら大歓迎だ」


決まりだね、と言って、
あたしは青峰くんと一緒にマジバーガーへ向かった。



















「いただきます!」


注文したものを持って、席につき……
そう言ったあたしは、ハンバーガーにかぶりついた。





「お前はあんま、カロリーとか気にしないんだな」

「いや、全く気にしてないわけじゃないけど……
 でもおいしいものは普通に食べたいでしょ?」

「言えてる」


おかしそうに言って、青峰くんの自分のハンバーガーを食べ始める。










「……それで?
 なんで急に奢るとか言い出したんだよ」


実はさっきから少し気になっていたらしい。
ポテトに手をつけながら、問いかけてきた。





「あ、うん……
 だって明日、青峰くんお誕生日だよね?」

「あ? そうだけど、なんで知って……」


そこまで口にした青峰くんは、何かに気づき……










「……いやいい、解った。さつきだな」


そう言って、合点がいったというような顔をした。










「本当は当日にお祝いしたほうがいいだろうけど、
 明日はご家族もお祝いしてくれるだろうし」


偶然にも今日会えたんだし、一日早いけど
お祝いの代わりにご馳走できないかなって。





「……でも、せっかくのお誕生日に
 マジバ奢るくらいしか出来なくて申し訳ないけど」


会えることが解ってたら、何か用意してたのにな。





「別に、そこまでしてもらう必要ねーよ。これで十分だ」

「ほんと?」

「ああ」


それなら良かった……。

あたしはホッとしながら、自分のポテトに手を伸ばした。



















「なんか逆にごめんね、青峰くん」

「いや、いーって。気にすんな」


家までの帰り道を、あたしは青峰くんと一緒に歩いていた。

お店を出た直後、「送ってやる」と言ってくれた彼に、
そんなに遅い時間でもないからと初めは断ったんだけど。





『いいから、行くぞ。
 お前を一人で帰らせたら、後が怖いらしいからな』





どうやら、黒子くんに何か吹き込まれたらしい。
……それが何なのかは、あえて聞かなかった。

かくしてあたしは、彼の厚意に甘えて
そのまま送ってもらっていたのだった。










「青峰くん」

「何だ?」

「最近はバスケの調子、どう?」


せっかくだから何か話そう、と思ったけれど、
結局気になるのはバスケのことで。

出会ったばかりの彼ならばまだしも……
今の彼ならば、答えてくれる気がした。










「あー……まぁ調子はいいな」

「ほんと?」

「ったく、なんで嬉しそうなんだよ。
 この調子で行けば、次はオレたちが勝つんだぞ」


誠凛が負けてもいいのかよ、と、
青峰くんは少し呆れたように言う。





「それは、ちょっと困るけど……」


でも、青峰くんが楽しそうにバスケしてるんだなって思ったら
なんだか嬉しくなっちゃって。

そう言うと、青峰くんは一瞬目を見開き
すぐまた呆れ顔になって言う。















「ホンっっトお前って……お節介」

「ありがとう」

「褒めてねぇよ」


なんて言いながらも、その表情は優しい。
だからあたしも、つられて笑った。
















あなたがこうして 普通に笑えていることが



(とても尊いことだと思ったよ)