彼女を始めて見たのは、WC決勝……
誠凛との勝負を終えたときだったわ。
『みんな、優勝おめでとう……!』
嬉しそうにそう言って、
コートの出入り口で誠凛のコたちを出迎えてた。
コート内で試合を観ていなかったところからして、
マネージャーというわけではないみたい。
『うす』
『ありがとうございます』
『当然っすよ』
でも、彼女に対する彼らの対応はとても丁寧で……
何か深い絆で繋がった相手だということだけは、解った気がした。
そのときはそのまま、何故か彼女から目が離せなかった。
「ねえ、征ちゃん」
「何だい、実渕」
あれからしばらく経った日の、部活終了後。
偶然にもロッカーで征ちゃんと二人になった私は、
思い切って彼女のことを切り出すことにした。
「WCのとき、征ちゃんあのコと連絡先交換してたわよね?
誠凛のマネージャーのような、ちょっと違うようなコ」
「ああ、彼女のことだね。
確かに交換したが、それがどうかしたかい?」
「ちょっと、彼女と話してみたくて」
どうにかして、コンタクトを取りたいのよね。
「彼女と話してみたい……か。
確かに少し変わっているし、話す価値はある」
どこか楽しそうにしながら、征ちゃんはそんなことを言う。
「だが、君からそんな話が出てくるとは意外だな。
君にも彼女との接点があるのかい?」
「それは……何もないわよ。
WCのとき、少し見かけただけだから」
「そうか。所謂、一目惚れというやつだね」
なんだか、そう言われると釈然としないけど……
つまりはそういうことなのよね、きっと。
「もう、そこはあまり掘り下げないでちょうだい!
それより連絡してくれるの? くれないの?」
「ああ、もちろん連絡してみるよ。
チームメイトの恋だ、応援しないわけにはいかないだろう」
「征ちゃん!」
「はは、すまない」
もう、絶対楽しんでるわよね、このコ……。
「家に帰ったら彼女に連絡してみるよ。
その結果は、また明日の部活のときで構わないかい?」
「ええ、大丈夫よ。
申し訳ないけどよろしくね、征ちゃん」
「ああ」
ずいぶんと、からかわれてしまったけれど……
他の男どもならともかく、征ちゃんだもの。
きっと、連絡はきちんと取ってくれるはずだわ。
「…………」
何の接点もない私が、話してみたいだなんて……
彼女はどう思うかしら。
急に何だろう、って思ったりして……。
「その点については、心配いらないだろう」
「え?」
「確かに君の申し出は、
突然のことだと思われそうだが……」
「…………」
征ちゃんには、私の考えなんてお見通しのようね。
「きっと彼女なら、嬉しいと思うはずだ」
「そう、かしら」
「ああ。言っただろう、彼女は少し変わっていると」
「ええ……そうね、確かに」
征ちゃんがそう言うんだわ、
彼女はきっと、他のコとは何か違うのよね。
だからこそ私も、あのとき彼女から
目を離せなくなったのかもしれないし……
「とにかくまた明日、この件については話そう」
「ええ」
彼女がなんて言ってくれるのか……
とっても楽しみだわ。
明日が待ち遠しくて眠れなくなってしまった
(なんて、まるで小さな子どもよね)