「今日はここで昼寝かよ」
「わっ、よく解ったね!」
さすが隼人、と言うと、
「誰に言ってんだ」とすぐに返された。
「そうやってどこでも寝ちまうクセ、
いい加減どうにかなんねぇのか」
「うーん……自分でこれが『クセ』と思ってないからね」
どうにもならないんじゃないかなぁ。
「する気がないだけだろうが」
「確かに、その言い方のほうがしっくりくる」
そう言って笑うと、隼人は少し呆れた顔をした。
でもそういう顔をしただけで、本心ではないと思う。
「お前は……10年前から変わらねぇな」
「そうかな?」
「ああ」
そう言った隼人だったけど、
具体的に「どこが」とは言わない。
たぶん、全体的に変わってないんじゃないかな?
隼人にしてみれば、だけど。
「でも、隼人も変わらないよね」
「は?」
「こうやってあたしを見つけてくれるの、
10年前からずっと隼人だけだよ」
リボーンに言われて、かくれんぼ方式の特訓を
やっていたことが何度かあった。
そのとき誰もあたしを見つけられなかったのに、
隼人だけはいつもあたしを見つけ出してくる。
「……お前の居場所が解ったっつーより、
昼寝に最適の場所を割り出しただけだ」
「あー、なるほど!」
それは頭のいい発想だな。
まぁ、実際この人は頭いいしな。
「でも、それだって……
他の人がやったら、見つけられないよ」
昼寝に最適の場所って、
人の好みによりけりじゃん。
裏を返せばそれは、隼人があたしの好みを
ちゃんと解ってくれているということだ。
「まあ……結果そうなるのか」
「うん」
少し顔を赤くしてつぶやいた。
――ああ、そうだね。
そんな照れ屋なところも、10年前から変わらないよ。
「正直10年前は、『10年後』って
すごく遠い世界な気がしてた」
10年前のあのとき……
10年後の自分たちが居る場所を、
実際に目にしたけれど。
それでもなんだか、別世界のような感じがして。
「でも実際に、こうして『10年後』に自分が居る。
そう考えると、なんだか不思議っていうか」
今だから「意外と早かった」ってなってるけど、
やっぱり10年の月日ってかなり長いと思うんだよね。
「そんな長い時間が経った今でも、
変わらず隣に隼人が居てくれる」
それってすごいことだし、ありがたいし……
何より、すごく嬉しいことだと思うよ。
「……そーかよ」
「うん!」
ここからまた10年後、20年後……
その先もずっと、隣に居てほしいな。
あれから10年後、ここで君と
(こんな風に他愛もない話をして 幸せを感じている)