「……あっ」
そろそろ寝る準備をしようかな、と思いながら
ふと外に目をやると。
夜空に丸い月が浮かんでいた。
「すごい、本当にまんまる……」
間違いなく今日は満月だな。
星も綺麗だし、ちょっと外に出てみよう。
そう思ったあたしは、さっそく行動に移した。
「わあ……」
外に出てみると、思った通りたくさんの星が輝いていて。
「綺麗……」
まんまるの月も、すごく綺麗だった。
『こんな夜遅くに、一人で何してるの?』
『あっ、総司さん』
『しかもそんな薄着でさ』
『えっと、その……すみません』
つい謝ると、「別に怒ってないよ」と返される。
――でも、言われなくてもなんとなく解った。
これはたぶん、単純に心配してくれてるだけだ。
『で、何してたの?』
『月がまんまるで星も綺麗だったので、
外で見たいなと思って』
『ふうん、そう』
大して興味の無さそうな返事をするものの、
総司さんは夜空を見上げ……少し間を空けて言う。
『……確かに、綺麗かもね』
『えっ』
『何? 僕がこんなこと言うの、
珍しいって思ってる?』
『いや、そんなことは……!』
『あはは、本当に君って嘘が下手だよね』
総司さんにしては珍しく……
なんて思ったら、また見透かされそうだけど。
嫌味で言った感じは全然しない。
なんと言うか……純粋に楽しんでる感じがする。
『どうかした?』
『いえ、ただ……
総司さんが楽しそうで良かったなって』
『……そんなに楽しそうだった?』
『はい』
その問いに即答すると……
『……本当に、君って変わってる』
そう言って、またしても珍しく照れていた。
「こんな夜遅くに、一人で何してるの?」
「……!」
声が聞こえて振り返ると……
あのときと同じように、総司さんがそばまで来ていた。
「月がまんまるで星も綺麗だったので、
外で見たいなと思っていたんですが……」
「ですが、何?」
「ふと思い出していたんです。
十年前のことを」
十年前も同じだった。
外に居たあたしに、総司さんが声を掛けてくれた。
「ああ……そういえばあのときも、
君は月や星を見ていたっけ」
「はい」
あのとき総司さんは……
薄着で外に出ていたあたしを心配してくれた。
きっと、今も同じだと思う。
「……なんかやけに楽しそうじゃない?」
「楽しいというより、嬉しいです」
総司さんが変わらず、気遣ってくれることが。
「僕はまだ、気遣うようなこと言ってないけど?」
「言ってなくても解りますよ」
だって、あれから十年も一緒に居るのだ。
言葉にしないと解らないこともまだ多いけど、
もう言葉にしなくても解ることだってある。
「…………本当に、君って変わってる」
そう言った総司さんは、また珍しく照れていた。
あれから十年後、ここであなたと
(変わらない時間を 過ごせている)