「…………晋助」
「…………」
晋助は、話しかけても答えない。
「……晋助」
「…………」
目線も、合わせようとはしない。
「……しんすけ」
「…………」
ただ、ひたすら星が散らばる空を見ているだけだった。
晋助はいったい何を見ているのだろう。
空?星?……いや、そうではないと思う。
あたしは晋助とは別の存在だから、その想いを全て理解することなんて不可能だ。
だけど、今、何を想っているのかくらいはなんとなく感じることができる気がする。
「…………星空に、松陽先生の影を見い出したの?」
「……!」
先ほどまで頑としてこちらを見ようとしなかった晋助が、思い切りこちらに顔を向けた。
……おそらくは、図星だったのだろう。
「今は亡き人の影を星空に見い出すとは、なかなかロマンチックなところもあるね」
「…………バカにしてんのか」
あたしの話し方が癇に障ったようだ。
晋助の目つきは悪くなっていった。
「バカにしてなんかないよ」
「…………」
「松陽先生の影を見い出すことは、悪いことではないと思う、ただ……」
「……?」
ただ、ひとつだけ、伝えておくよ。
「晋助が松陽先生から教わったことを、次の世代に伝えていくことも大切じゃない?」
「!」
人は、永遠に生きることは出来ないから。
大切なことを学んだなら、それを後世に残すべきだ。
……そんな、どこかの科学者みたいなことを考えた。
「晋助にとっての松陽先生のような存在に、今度は晋助がなり得るかもしれないよ」
「…………」
「そう考えると、素敵じゃない?」
あたしの言葉を聴いた晋助は、黙り込んでしまった。
「…………なんて、偉そうなことを言ったね」
本当は、こんなことを言えるほど、あたしは出来た人間ではないのだ。
だけど、それでも晋助に伝えておきたかった……気がするんだ。
晋助が、松陽先生を奪ったこの世界を壊したがっていることは知っている。
それを咎めるつもりも、邪魔するつもりもない。
むしろ、力になれるなら喜んで手を貸そうと思っている。
……だが、いつまでもそんなことをしていてはいけないと、
あたしは心のどこかで感じているのだろう。
だから、それを、晋助に伝えておきたかった。
おそらく、今の晋助の姿を見て一番哀しく思っているのは、
銀時でもなくヅラでもなく……松陽先生だろう。
だから、あたしは、突然こんなことを言い出したんだ。
自分でも、自分でやっていることがよく解らない……
「…………俺も、」
「……?」
「先生みたいに……なれると思うか…………?」
「!」
それは、あたしの言葉をきちんと聴いてくれたという証拠。
「…………なれるよ、晋助なら」
「そうか…………」
それ以上は、晋助もあたしも何も言わなかった。
ただ少し、晋助の中に変化があった気がする。
ただの直感でしかないが、あたしはそう感じていた。
いつか、先生のような存在になれる、その日まで。
あたしたちは、迷いながらも歩いていこうと思う。
遠く、先の未来
(私たちは それを考えなければならないのかもしれない)