『私は、運命を変えたいんです……だから、協力してください』
真剣な顔をした望美からそう言われたのは、昨日のこと。
彼女は、自分の持つ秘密を明かしてくれたのだ。
協力してほしいという彼女に、あたしは喜んで力を貸すと伝えた。
『ありがとうございます!』
そのときの彼女の表情から、嬉しさがにじみ出ていた。
「考え事ですか?」
ぼーっと庭を眺めていた私の背後に居たのは、弁慶だった。
気配を殺して近づいてくるだなんて、この男も意地の悪いことをする。
「…………私だって、考え事くらいする」
少し、可愛くない答えを返した。
「…………すみません、別に嫌味を言ったわけではなかったんですが」
じゃあ、どういうわけだ、という視線を投げかけると、
その意味をくんだのか、弁慶がにっこり笑って言った。
「ただ、人の気配にも気づかないほど、あなたが考え込んでいたもので。
少し、珍しいなと思ったんですよ」
確かに、私は人が近づいてくれば考え込んでいようともすぐに気づく。
それなのに、今は、弁慶が近づいてきたことに全く気づかなかったのだ。
「相当考え込んでいたようですね」
「…………」
弁慶は、何を考えていたのか、などといったことは聞かない。
……待っているのだ。私が自分から話すまで。
「…………弁慶」
「はい」
弁慶は、どんな答えをくれるだろうか。
「今から、何か大きなことをしようとしてるとき、 弁慶は何が何でもそれを成し遂げるか?」
成し遂げようと、努力するのか?
「そうですね……僕なら、それを成し遂げようとするでしょう」
「大変なことだと、解っているとしても?」
「ええ」
そう答える弁慶は、笑顔を崩さない。
だが、その瞳からは揺るぎない決意が垣間見えた。
「もし、あなたが何かしたいのならば、僕も力になりますよ」
「…………頼りにしている」
「はい、いつでも頼ってくださいね」
『弁慶さんを助けてあげてください!
それが出来るのは、きっとあなただけだから…………』
私が成し遂げたいのは、弁慶を救うことだ。
――――それを本人に伝えることは、この先一生無いのだろうが。
救いたいのは、あなた
(なのにどうして あなたは自分を犠牲にする)