「あーもう!腹立つ!!」
あたしは怒りに任せ、屯所の廊下をずんずんと歩いていた。
「ずいぶんとご立腹だな」
「左之!」
そんなあたしに声をかけたのは、左之だった。
「ちょっと聞いてよー!
さっき、総司と平助、新八と四人でしゃべってたんだけど……」
『ねぇ、あたしと千鶴で言ったらどっちが好み?』
『千鶴ちゃん』
『千鶴』
『千鶴ちゃんだろ』
「…………って、あいつら即答しやがった!
そりゃあどっちだって聞かれたらあたしも千鶴って答えるけどさ!!」
もうちょっと悩むそぶりを見せてくれても、いいんじゃないの!?
「なんだ、そんなことで怒ってたのかよ」
「そ、そんなこと!?」
…………いや、確かにそんなこと、だよね。
うん、解ってる、解ってはいるんだけど……
「やっぱり腹立つ〜!」
未だに怒りが収まらないんだけど!!
「まあ、そんなに怒るなって。
俺は千鶴よりお前の方が好みなんだから、それでいいだろ?」
「……………………うん、それでいい」
結局あたしは、この男に敵いっこないのだ。
きっと、ずっと勝てない
(でも、やっぱり悔しくもある)