「おはよう、キバ!」

「よう!」



あたしが元気よく挨拶すると、キバも同じように返してくれた。







「あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど……」

「何だよ」

「特訓に付き合ってほしいんだ」

「お前の?」



そうだよ、とあたしが答えると、キバは少し考え込んだ。
だけど、キバの考えはすぐにまとまったようだ。










「いいぜ!じゃあ特訓すっか」

「本当?ありがとう!」



そうして、あたしたちは特訓が出来そうな広場に向かう。



















「じゃあ、始めるぜ!」

「オッケー!」



あたしは、あまりキバとは特訓をしない。
だって、集中できないのが目に見えているから。





理由は単純だ。
あたしは、キバのことが好きだから。


強くなるための特訓で、好きな人を相手にしていたら
あたしの場合は集中できなくなる。
だから、普段はあまり頼まないんだけど……





今日は、なんとなくキバと特訓したくなって。
これについては、明確な理由なんて無いんだけれどね。















「考え事してると怪我するぞ!」

「解ってるって!」



そう言って、あたしの意識を特訓に戻すキバ。





「今度はこっちから行くよ!」



防御に回っているだけじゃ、何も変わらない。
そう思ったあたしは、自分から仕掛けることにした。











「ふーん、やるじゃねぇか!」

「あたしを誰だと思ってるの?」

「言ったな?今度はこっちから行くぜ!」



久しぶりにやったキバとの特訓は、何だかとても楽しくて。
時間が過ぎるのも忘れ、あたしたちはしばらく攻防を繰り返していた。















……時間が過ぎていたことにやっと気付いたのは、夕日が出ていたからだ。
これ以上やっても良くないと判断したあたしたちは、
そこで特訓をやめて帰ることにした。










「お前、かなり強くなったよな」

「そうかな?」



そう言われるのは、やっぱり嬉しい。
強くなりたくて、あたしも修行しているのだから。





「それに、前より気迫もすげー伝わってくるし」



何かあったのか、とキバは続けた。















「ううん……特に何かがあったわけじゃないんだけど。
 ただ、ちょっと考えたの」

「考えた?」

「うん」



あたしは、ただ単に強くなりたいんじゃない。
必要なときに、力がないのは嫌だから……
進んで使いたいとも思わないけれど、
必要なときに力があれば、何か出来ると思うから。
だから、あたしは強くなりたいんだ。







「力がある=強いと思っているわけでもないけどさ」



それでも、今のあたしに出来ることは特訓しかない。





あたしの言葉を黙って聴いていたキバは、少し間を空けて言った。















「お前は、お前の好きなようにやればいいんじゃねぇか?」

「……そうだね!」



そうやって、あたしに一番必要な言葉をくれる君だから。
だから、何かあったときには、あたしが守りたいんだよ。





君は、守られたいわけじゃないと、怒るかもしれないけどね。










「じゃ、帰ろっか!」

「ああ!」



そうして、もと来た道を二人で引き返していった。





















守りたいから、強くなるよ





(いつかそのときが来たとき、力を出せるように)