チェスの兵隊を完全に倒し、ギンタはダンナさんと一緒に
もと居た世界へ帰っていった。
そして、あたしたちはそれぞれの生活を始めていたのだった。
「アル〜、そろそろ行く?」
「そうだな」
あたしとアルヴィスは、その後、一緒に暮らし始めた。
あれから一年……お互い意地っ張りな性格あって喧嘩もするけど、
やっぱり一緒に居られるのは嬉しいんだ。
「二人とも、早く行こうよ!」
「今行くよ、ベル!」
ベルは、初めあたしを嫌悪していた。
でも、何故かは解らないけどいつの間にか認めてくれたみたいで。
今では仲良しなの。
「準備はいいか?」
「うん、オッケーだよ」
あたしの返事を聞いて、アルヴィスはアンダータを使った。
「みんな、もう来てるかな」
あたしたちが向かったのは、ルベリアだった。
実は、今日ここでメルのみんなと会うことになっていた。
「おー、待っとったで!」
「ナナシ、久しぶり!」
出迎えてくれたのは、ここリベリアを率いるナナシだった。
一年経ったとはいえ、ナナシは変わりないように見える。
「アルちゃんも元気そうやな」
「お前は元気が有り余っているようだな」
「ちょ、そりゃないで」
「あはは」
この感じ、なんだか懐かしいな。
「既に全員集まっているのか?」
「アルちゃんたちが最後や。みんな、中におるで」
「じゃあ、行こっか!」
ナナシに連れられて、あたしたちはルベリアの砦の中に入る。
「わぁっ、久しぶり!」
「スノウ、本当に久しぶりだね!」
すぐに抱きついてきたのは、レスターヴァの姫、スノウ。
ナナシと同じく、あまり変わった様子は見られない、けど……
「スノウ……前よりも、姫らしくなったね」
「え、そ、そうかな?」
「うん」
あたしがそう言うと、スノウは照れたように笑った。
ああ、こういうところはやっぱり変わってないかな。
「元気そうっスね」
「ジャック、久しぶり!」
ジャックは確か、家に戻ってまた畑仕事をしてるとか。
かつてチェスの兵隊だったパノも一緒みたいなんだよね。
……結局、マッシュルームの力なしでも
パノはジャックのこと好きってことなのかな?
「あんまり変わってないわね」
「ドロシー!」
妙なことで考え込んでしまったあたしに、声を掛けたのはドロシーだった。
「ドロシーは……なんか、変わったね」
「そう?自分じゃ解らないけれど」
服装のせいなのかな。
なんていうか……大人の魔女って感じ?
「あんたたちに、見せたいものがあるのよ」
「見せたいもの?」
言われるがままに、ドロシーが取り出したものを見る。
「これは……門番ピエロにも見えるが」
「うん、でもちょっと違う気もするよね」
ドロシーが取り出したのは、ARMだった。
それはアルヴィスが言うように門番ピエロのようだけど、
やっぱり少し違うように見える。
「これは、門番ピエロを元にして作った新しいARMよ」
「そうなんだ……」
ドロシーは、カルデアに戻ってARMの研究をするって言っていたから。
おそらく、これはその成果なのだろう。
「ほら、向こうを見てごらん」
ドロシーの声に合わせて向こうの方を見てみると、
見覚えのある……でも、此処に居るはずのない姿があった。
「久しぶりだな、みんな!」
「ギンタ!?」
ギンタは、もと居た世界に帰ったはずなのに。
どうして此処に……?
「その門番ピエロを元にして作ったARMか」
「そうよ、さすがアルヴィスね」
そ、そっか……
「これが、その新しいARMの力なんだね……」
「そういうこと」
まさか、またギンタにも会えるなんて。
「ギンタも元気だった?」
「ああ、元気すぎるくらい元気だぜ!」
ギンタにしても他のみんなにしても、
それぞれが自分らしく生活しているみたいだ。
あたしはそれが解って、嬉しくなった。
「さーて、今日は思いっきり飲むでー!」
「おー!」
「って、スノウは飲んじゃ駄目だって!」
また酔っ払っちゃうに決まってるんだから……!
宴もお開きになった後、あたしはルベリアの砦から出て外の風に当たっていた。
「捜したぞ」
「あ、アルヴィス……」
黙って出てきたのに居場所がばれてしまうなんて、アルには敵わないな。
「…………ねぇ、アルヴィス」
「何だ?」
あたし、やっぱりメルのみんなが大好きなんだ。
「また、ここで……こうしてみんなと楽しく過ごしたい」
毎日じゃなくていい。
また、一年後だっていい。
ただみんなと……あなたの居る場所で、笑っていたいんだ。
「…………また此処に来よう、そのときも一緒に」
「うん!!」
みんなで守ったこの世界で、あたしたちは生きていく。
そう、ずっと。いつまでも。
また此処に
(また二人で 此処に来ようよ)