そして、十年後……あのときとは、大きく変わってしまった。
あれほどボスになることを嫌がっていたツナも、
今では立派なボスとして生活している。



山本だって、野球を諦めてしまった。
父親を殺されたあの日、マフィアになることを選んだのだ。










了平さんも、あの頃はいまいちマフィアのことを解っていなかったのに。
今では10代目であるツナの守護者として、責務を果たしている。





そして……あたしもまた、ツナのもとでボンゴレの一員として動いていた。



それが悪いといいたいわけではない。
だけど、得たものの代わりに失ったものも、また大きかったのだ。















「ここだと冷えるぜ」

「隼人……」



ボンゴレの一員としてあたしが任されたのは、
ツナの右腕……つまり、今目の前に居る隼人の補佐だった。





『君には、獄寺くんの補佐をお願いするね』



きっと、右腕と言って頑張りすぎてしまうだろうから。
だから助けになってほしいのだと、ツナはあたしに言った。










「何かあった?」

「……いや、別に」



隼人があたしを捜すなんて珍しいから、思わず問いかけた。
あたしが隼人を捜すことはあっても、逆はあまりない。
理由は簡単だ。隼人にとっては、ツナが一番だから。





だけど、あたしがそれを怒っているわけでもなくて。
……隼人は今までそうやって生きてきたから、仕方がない。
ただ、あたしにとっての一番は、隼人だから。
だからあたしが隼人を捜す、というのはよくあることなのだ。











「なんとなく……最近会ってなかっただろ、だから」



だからあたしを捜して、会いにきてくれたようだ。
不器用な隼人のことだから、きっと自分で考えたわけじゃないだろう。
おそらくはツナに言われてきたのだろうけど。





そう解ってはいたけれど、あたしはあえて口にしないでおいた。















「長期の任務、どうだった?」

「ああ、何事も無かったぜ」



最近隼人と会っていなかったのは、
隼人が長期の任務で出払っていたからだ。
それは仕方のないことだし、解ってはいるけれど
やっぱり少し寂しい気持ちもあって。





それをうまく察してくれたツナは、やはりボスにふさわしい、
なんて。そんなことを思う。















「お前……なんかあったのか?」

「どうして?」

「それは、10代目が……」



ああ、そうか。
ツナはそこまで察してくれたんだ。










「ちょっと、ね……
 この十年のこと、振り返ってたんだ」



隼人は不思議そうな顔をしてあたしを見る。
だから、あたしは続けた。





「この十年で、ツナも隼人も、みんなも
 もちろんあたしだって、いろんなものを失くしたと思う」



得る代わりに手放さなければならないものだって、たくさんあった。










「でも、それでもそれを選んだのはあたしたちだから。
 だから後悔してるわけじゃないんだけど」



たまに、ふと、思うんだ。
マフィアになっていなければ、どうなっていただろうって。















「…………お前が言いたいことも、解る」



黙っていた隼人が、ぽつりと話し出した。





「けど俺は、欲しいもの全てを持ったままいられるとは思わない」



両手にあるものは少ないとしても、守りたいものだけあればいいんだ。










そう言った隼人は、何だかんだでやっぱりすごい人だ、とあたしは思ったのだ。





「そうだね……あたしも、そんなに多くは要らないよ」



失うものも多い道だけど、進んで行くよ。




















それでも僕らは それを選んだのだから





(だから、迷ったりしないよ)