全てに決着がついて、白龍に時空の狭間を開いてもらう日が明日に迫っていた。
望美ちゃんたちは、どうやら予定通り元の世界へ帰るようだ。
だけどあたしは……それとは、別の決断をしていた。
「私に話とは……どうかなさったのですか」
「ううん、そんな深刻なことじゃないんだよ」
心配しないで、とあたしは銀に言う。
だけど、当の銀は未だ心配そうな顔をしていた。
「あのね……この世界に、残りたいんだ」
いいかな、とあたしは続けて言った。
その言葉に、目を見開く銀。
「あなたと一緒に、居たいんだ。
だからあたしは、この世界に残りたい」
ずっと考えていて、やっと決断したこと。
それを、あたしは銀に伝えた。
「しかし……そうなれば、あなたはここで一生を過ごすことになる。
それでも、よろしいのですか?」
「うん、いいの。もう決めたから」
この世界に残るということは、言い方を変えれば、
もと居た世界を捨てるということだ。
もう、向こうに居る家族や友人には会えないことになる。
「でも、やっぱり……大好きな、あなたと一緒に居たいの。
それとも、あたしが残るのは迷惑かな?」
「そんなことは決して……!
ですが、やはり……
私のために、あなたが大切なものを失うのは耐えられません」
銀は、あたしの手をとって続ける。
「あなたがこの世界に残るのではなく、私があなたの世界に参ります」
「で、でも……いいの?」
「はい。私はもう、あなたが居なくては生きてゆけません。
だからと言って、あなたをここに留めたいわけではない」
あなたの大切なものは、あなたの世界にあるのだから。
銀は、最後にそう言った。
「もちろん……あなたがお許しくださるのなら、ですが」
微笑みながら、銀はあたしを見る。
答えを、待っているようだ。
「解った……一緒に、あたしの世界に来て」
「はい、あなたの御心のままに」
翌日、望美ちゃんたちと一緒に、
あたしは銀を連れて元の世界へと帰った。
ねぇ、本当は。
居場所なんて何処でもいいのかもしれない。
ただ、あなたと一緒に居たいんだ。
だから、共に行こう。
あたしが生まれ、育った世界へと。
あなたと一緒に居られるのならば
(それがたとえ 何もない世界だとしても)