これは、藍染や市丸、東仙が尸魂界を去り、
一時的に平和が続いていたときの物語である……――――
「大変です、砕蜂隊長〜!」
隊長の名を叫びながら二番隊の隊舎に駆け込んできたのは、
真央霊術院を卒業したのち、すぐ二番隊に配属されただった。
「そのように慌ててどうしたのだ、」
そんな彼女の様子に、見た目はいつもと変わらぬ様子であるが、
内心では相当彼女を心配している砕蜂が話を聴こうとする。
そんなにベタ甘な隊長に、未だ落ち着きのない彼女は早口になりながら答えた。
「そ、それがっ!
瀞霊廷にこんな可愛い猫ちゃんが居たんです!」
そう言って彼女が隊長に見せたのは、美しい真っ黒な毛並みを持つ猫。
彼女にとっては真面目な話のつもりであるのだが、同じく隊舎に居た隊士たちは、
「え?大変なことって、ただの猫?」と思わずにはいられなかった。
「何かと思えば……夜一様ではありませぬか」
「え?よるいちさま……?」
そんなことかといった風に、砕蜂はその黒猫に話しかける。
一方のは、何が何やらという様子で頭に?を浮かべていた。
「何か用がおありなら、その格好でおいでになるのは止めてください。
このように、何も知らぬ者が慌ててしまいます」
「ここに来るのも久しぶりなのでな。
この姿でこっそり潜入しようと思っていたところを、この娘に捕まってしまったんじゃ」
「ね、猫ちゃんがしゃべった!?」
傍から見れば、黒猫に対し普通に話しかける砕蜂も気になるが、
にとって問題だったのは、その黒猫が言葉を発したことらしい。
「動きが素早い娘だと思っていたら、おぬしの下に就いておったのか」
「はっ……この者は第三席に身を置きながら、
実質隊長格にも引けを取らぬ力を持っております」
「なるほどな」
「あ、あの、砕蜂隊長……そちらの方は?」
黒猫と何やら親しげな様子で言葉を交わす砕蜂に、は思い切って聞いてみた。
「ああ、こちらの方は四楓院夜一様。
私が務める以前は、夜一様が隠密機動総司令官と
同第一分隊『刑軍』の軍団長を務めておられた」
「ええっ!?
先代の隠密機動総司令官並びに第一分隊『刑軍』の軍団長!?」
この猫ちゃんが!?と、は続ける。
「夜一様の本来の姿は、猫ではない」
焦るに対し、砕蜂は呆れつつも(彼女にしては)優しく答えてやった。
「そ、そうなんですか……」
は、すごい、という羨望の眼差しを夜一に向ける。
「…………とにかく、夜一様。
一度本来のお姿にお戻りになってから、いらしてください」
「ああ、解った」
そうして、その黒猫はいったん二番隊の隊舎を離れた。
「うむ……
やはりこの姿だと肩が凝るのう」
「無茶なことをおっしゃらないでください」
そして、人の姿に戻って再び二番隊の隊舎にやって来た夜一。
その姿を見て再び大げさな反応をしたのは、やはりである。
「そ、砕蜂隊長!そちらの方はどなたですか!?」
「、私の話を聴いていなかったのか?こちらは夜一様だ」
「ええっ!?このものすごく綺麗な方が!?」
というか、は今日だけで何度驚くつもりなんだ?と、
他の隊士たちは密かに思っている。
「おぬし、名は何と言う」
「は、はいっ!私は、二番隊第三席、と申します!」
「か……先ほどの瞬歩、見事だった。
砕蜂の下できちんと修行を積んでおるようじゃな」
「あ、ありがとうございます!砕蜂隊長のご指導のおかげです!」
四大貴族の一つである四楓院家……
その四楓院家の人間であり、そして先代の軍団長である夜一が相手ということもあり
もいつも以上に緊張した様子でそう答えた。
「砕蜂も、良い部下に恵まれておる」
「はい、は良い働きをしてくれています」
何だか解らないけれど、憧れの存在である隊長や、
ものすごい経歴をお持ちの四楓院様に褒めてもらってるんだよね!
は緊張しつつも、それが嬉しくて仕方ないようであった。
「して、夜一様……一体どのような御用でいらしたのですか」
「うむ……ちと、瀞霊廷内の様子を見に来たんじゃ」
「瀞霊廷内の様子、ですか?」
「ああ。一連の事件で、護廷十三隊から三人もの隊長が抜けてしまったじゃろう。
その影響で、瀞霊廷内も混乱しているのではないかと思ってな」
特に、隊長が抜けた三番隊、五番隊、九番隊の隊士たちは、
未だ困惑しているのではないか、と夜一は続けた。
「……おっしゃる通りです」
夜一の言葉に、少し間を空けて砕蜂はそう答えた。
「あ、あの……隊長。一連の事件と言うのは、
朽木ルキアさんや旅禍の方々が関わっていたという、事件ですか?」
「なんじゃ、おぬしは知らぬのか?」
「は、はい」
の問いに対し、逆に聞き返してきたのは夜一だった。
大事件だったと言っても過言ではないあの事件を、死神であるが知らないはずは無い。
そのため、夜一は不思議そうな顔をしてに聞き返したのだ。
「私は、一連の事件の少し前、虚退治に出掛けたときに怪我をしまして……
事件の間は、ずっと四番隊で療養しておりました」
皆さんが大変だったときに、情けないです。
は、だんだん小さくなる声で言った。
「いや……おぬしが気に病むことではない。
此度の事件は、ひどかった。
むしろ、関わらなくて良かったのやもしれぬ」
死んだと思われていた藍染が、実は生きていたこと。
そして一連の事件の黒幕は、その藍染だったということ……
その中で利用された者や苦しんだ者も、たくさん居た。
何を思い出しても、とてもひどい事件だったのだ。
「……私も、今回のことでまだまだ修行が足りぬということが解った」
「そ、そんなっ!隊長は十分お強いです!
それに頭もキレるし、統率力もあるし……私の憧れです!!」
熱弁するに、砕蜂は一瞬あっけに取られた。
だが、すぐに気を取り直して言った。
「、私が言っているのは戦う力のみについてではない」
「え?」
「今回の事件で解った。私は、まだまだ子どもだったのだ」
「子ども……」
「たくさんの御託を並べたが、結局私は……置いていかれたことが、
哀しかっただけだったのだろう」
そう言って、砕蜂はその視線を夜一に向けた。
一方の夜一も、何か言いたげな顔をしている。
「隊長……」
「そんな顔をするな。私はお前に『憧れ』だと言われて嬉しい。
これ以上のことは無いだろう」
あんなに強い隊長だって、四楓院様だって……
きっと、この一連の事件で哀しい想いをしたに違いない。
……いや、二人だけじゃない。
瀞霊廷に居る死神、流魂街に住む者、旅禍とされた彼ら。
みんな、みんな、哀しい想いをしたはずだ。
「砕蜂隊長!四楓院様!」
しばらく黙っていたが、突然二人の名を呼ぶ。
「ど、どうした、?」
いつにない気迫を持っているに、砕蜂は少し驚いた。
「私……私、もう誰も哀しむことがないような尸魂界を作りたいです!」
誰かが涙を流すとしても、それが嬉し涙であるような。
「そんな場所を、作りたいです」
もう、誰も哀しませたくないから。
「今の私には力も無いし、ただの下っ端隊士ですし、
すぐに何か大きなことを出来るとは思いません」
でも、それでも。
「もう、誰も哀しむことがないような尸魂界を作りたいんです……
隊長にも、四楓院様にも、誰にも哀しんでほしくないから…………」
一気にまくし立てるように言ったは、それきり黙ってしまった。
だが、砕蜂と夜一の心には、の想いが届いたようである。
「ああ……期待しているぞ、」
「お手並み拝見といこうかの」
不敵な笑みを浮かべ、二人はそう言った。
「は、はい!頑張ります!!」
そんな二人に対し、も笑顔でそう答えた。
世界の太陽〜The sun of Soul Society〜
(君の笑顔は この世界の太陽だから)
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というわけで、お年賀企画・第2弾でした!いかがだったでしょうか?
これは友人の浅木桔梗ちゃんのリクで、
リク内容はBLEACHの砕蜂さんと夜一さんが出てくるお話、でした。
正直BLEACHは久しぶりに書いたので、お二人の口調とか全く自信が無いんですが…
話としては、自分的には満足ですね。
思ったものと違うものになってしまったのですが、この設定で長編を書きたくなってきました!
なので、色々やること終わったら長編にしてしまいそうです;
そしたら今回出せなかった死神メンバーも出したいですね(笑)
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
リクしてくれた浅木桔梗ちゃんのみお持ち帰り可です。
多少の苦情なら受け付けます(笑)
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