〜そのまた隣の扉〜
リズヴァーンが扉を開けた先。
そこは、どこかの洋館の、庭のような場所であった。
「あっ、リズ先生、やっと来てくれたんですね!」
辺りの様子を窺っていると、向こうの方でがリズヴァーンを呼んでいた。
「もう鍛錬の時間はとっくに始まってますよ。
さ、行きましょう!」
その言葉から察するに、自分はと日常的に鍛錬をしているようである。
リズヴァーンは、そう考えた。
「本当に残念なんですが……
今日は、望美ちゃんも九郎も来れないみたいで。
相手が居なくて困ってたんですよ」
冗談交じりに、そんなことを言う。
「神子と九郎は出かけたのか?」
「はい。あとは、弁慶さんと景時さんも一緒です。
望美ちゃんも活発な子だから一瞬忘れられがちですが、一応お嬢様ですからね」
守り役が居ないと、とが続けた。
「ああ、でも変な人が居ても、望美ちゃんは自分から向かっていきそう」
彼女は、強いから。
「……そうだな、神子は強くなった」
「そうですよね!」
「だが……お前もまた、強くなっている」
「え?」
リズヴァーンの言葉に、きょとんとなる。
「お前も充分強くなっている……自分に自信を持ちなさい」
「リズ先生……」
努力を怠らないだから。
だから、着実に強くなってきている。
お世辞でもなんでもなく、リズヴァーンは心からそう思っていた。
「先生、ありがとうございます!」
「礼はいらない。
さて、鍛錬の時間だったな。始めるとしよう」
「はい!」
「今日はここまでだ」
「はい、ありがとうございました!」
しばらく竹刀で打ち合いをしていたリズヴァーンと。
しかし、そろそろ頃合ということで、今日の鍛錬を終えることにした。
「……先生?」
がふとリズヴァーンの方を見やると、彼は何かをじっと眺めていた。
不思議に思って、近寄ってみる。
「何か見つけたんですか?」
「いや……」
そう言いながらも、リズヴァーンは視線をそらさなかった。
も、彼に倣ってその視線の先に目を向けてみる。
「ここは……良い場所だな。庭にも木や花が溢れ、日の光も温かい」
「あ……はい、そうですね」
どうやら、リズヴァーンは綺麗に手入れされた庭を見ていたようだ。
そんな彼の隣で、も少し微笑んで言う。
「この庭は、譲が望美ちゃんのために手入れしてますからね。
あそこにある洗濯物は、いつも通り景時さんが干してて、それで……」
ここには、どうやら怨霊も居ないのだろう。
とても、平和な世界だ。
「このような世界で、皆で過ごせれば良いのだろうな」
「…………はい」
だが、そのためには、怨霊を生み出す平家に勝たなければ。
それが最良の策だとは思えないが、今はそうするしかないから。
「先生……あたし、望美ちゃんや八葉のみんなに、幸せになってほしいんです。
だから……だから、頑張ります」
の瞳には、強い決意が秘められていたように見えた。
「ああ……頑張りなさい。
ただし、無理をすることのないように」
「はい!」
どうか、二人の少女に明るい未来を。
そう願いながら、リズヴァーンはと共にしばらく庭を眺めていた。
一月生まれへの指令:執事やメイドになりきれ
(指令を果たして、早く戻らねばならない)
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遙か十周年記念企画、一月のリズ先生Ver.でした!いかがでしたか?
やはりというか、リズ先生は剣の師匠ですよね!
千夜もぜひ指導して頂きたい!強くなりたいよ。
ちなみに、ここでは望美ちゃん&さんがお嬢様、九郎は坊ちゃんです(笑)
景時さんと弁慶さんがSPか(笑)
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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