〜その隣の扉〜










          「ここは……」



          幸鷹が扉を開けると、そこは西洋風の、
          それでいて歴史を感じさせるような建物の中だった。










          「妙だな……」



          自分は、こんな場所には来たことなんてないはずなのに。
          こういった建物を、知っている気がする……。















          「…………いや、今はそれどころではない」



          どこかに、殿が居るはずだ。
          そう思った幸鷹は、とにかくを見つけようと歩き出した。






































          「あ、幸鷹さん!」



          しばらく歩いていると、向こう側から走ってくると出くわした。










          「殿……どうしたのですか、そのように慌てて」

          「もう!幸鷹さんを探してたんじゃないですか」



          当たり前だ、と言わんばかりのに、幸鷹は少し焦る。















          「私を……?」

          「そうですよ。
           いつもなら、もう花梨ちゃんとみんなで勉強してる時間でしょう?」



          教育係の幸鷹さんが居なくてどうするんですか、とは続ける。










          「翡翠さんは真面目にやってくれないし、幸鷹さんが居ないと進まないんですよ」



          の話から察するに、自分は執事という人間の中で
          や花梨の教育係を担当しているらしいと判断した幸鷹。















          「しかし、翡翠殿も……?」



          まさか、あの不真面目の塊のような男が、自分と同じ教育係とは。
          誰か選んだのかは解らないが、人選を誤ったことだけは言い切れる……。
          幸鷹は、そう思った。














          「早く部屋に戻りましょう?」

          「ええ……そうですね」



          なんとなく状況がつかめた幸鷹は、とにかくと共に移動することにした。



















          「今日は……どの辺りからでしたか」

          「今日はですね、昨日の続きじゃないんですが
           ぜひ教えて頂きたいことがあって」

          「意欲があるのは良いことですね。
           それで、その教えてほしいことというのは?」



          幸鷹の、この切り替えの早さというのは、さすがである。
          毎日共に学んでいるならば、昨日の続きから始めるはずだ。
          そう思った幸鷹が問いかけると、は別のことを学びたいと言い出した。














          「歌を、教えてほしいんです」

          「歌を……?」

          「はい!あたしも花梨ちゃんも、歌が主流ではない世界に居ましたから。
           歌が詠めるようになって、文に書いて送りたいんです」



          お願いします、とが言う。










          「文に歌、ですか……。それは素敵ですね」

          「はい!だから、歌について教えてください」



          異世界の風習も、こうして興味を持って学ぼうとするなんて。
          この人は、やはり素晴らしい人だ。














          「……はい、もちろん私で良ければお教えいたします」

          「やった!」



          思えば殿は、元々京に詳しかったし、政についても知識を持っていた。
          そして、敵に立ち向かっていく勇気も持っている……。
          私も、見習わなくてはいけない。















          「歌が詠めるようになったら、文に書いて幸鷹さんに送りますね!」

          「私に、ですか?」

          「はい!だって、あたしが歌を詠めるようになったこと、
           幸鷹さんに一番に知ってほしいですから」



          まぶしいほどの笑顔で、そう言い切った










          「殿…………」



          その笑顔が、私の心を暖かくするなんて。
          殿は、きっと知らない。















          「ありがとうございます、楽しみにしていますね」

          「はい!」



          そうして二人は、花梨や翡翠の待つ部屋まで歩いていった。







































一月生まれへの指令:執事やメイドになりきれ






(どうやら、教えがいがありそうですね。)








































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            遙か十周年記念企画、一月の幸鷹さんVer.でした!いかがでしたか?
            幸鷹さんは最近遙か2をやったこともあって、
            なんとかキャラはつかめていました!…たぶん。
            やはりこの方だったら、教育係かなぁ、と思ったわけですね。
            そして、まさかの翡翠さんも教育係!

            最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
            人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
            宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!


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