〜左の扉〜










          「ここは……」



          ――ここが、管理人殿のお話にあった「城」だろうか。

          そんなことを考えながら、左の扉を開けた頼久は辺りを見回した。















          「…………殿は、いらっしゃらないようだな」



          与えられた命を果たすためにも、殿を捜さなくては。
          自分のすべきことをいち早く理解した頼久は、広い廊下を歩き出した。







































          「あれは……」



          しばらく城の廊下を歩いていると、扉が開け放たれている部屋を見つけた。
          ここから見える限り書物が多くあることから、
          書物を保管している部屋なのかもしれない。



          そんなことを考えながら、頼久はなんとなくその部屋に入ってみた。




















          「うーん……」



          その部屋を奥へ進むと、見覚えのある後ろ姿が頼久の目に入った。










          「殿……?」



          間違いない、あれは殿だ。















          「うーん……あとちょっとなんだけど……」



          どうやらは、棚の上の方にある本を取りたいのだが、
          手が届かなくて苦戦しているようだ。










          「こんなときに踏み台が壊れてるなんて、ついてない……」



          そんなことを言いながらが必死に手を伸ばすも、一向に本は取れない。















          「私がお取り致します」

          「え……?」



          その声に驚いたが後ろを振り返ると、ちょうど頼久が本を取ったところだった。










          「頼久さん!」

          「こちらでよろしいですか、殿」

          「は、はい、ありがとうございます」



          頼久の登場に驚きつつも、はお礼を言ってその本を受け取った。















          「突然頼久さんの声がしたから、びっくりしちゃいました」

          「……申し訳ありませんでした」

          「えっ……」



          笑いながらそう言った
          彼女にとっては冗談のつもりだったようだが、
          頼久はそれを必要以上に気にしてしまったらしく謝罪の言葉を発した。










          「ち、違います!怒ってるんじゃないんです!」

          「……そうですか」

          「はい……その、冗談のつもりだったんですけど……」



          なんだか逆に申し訳なくなってしまったは、
          頼久の顔を見れずうつむいてしまう。















          …………うつむいたの瞳には、頼久の姿は映らないはずなのに。
          間をあけずして彼女の瞳には、彼の姿が映り込んだ。










          「頼久、さん……?」

          「そのようなお顔をなさらないでください」



          よく見ると、頼久はの前でひざまずくようにしていた。















          「この頼久は、あなたを……あなたの笑顔を守るためにここにおります。
           ですから、そのようなお顔をなさらないでください」

          「頼久さん…………」



          頼久はの手を取って、ぎゅっと握った。
          普段ならば仕える相手にこのような真似はしないのだが、は別。
          彼女は、不安なときに手を握ってもらうと安心するのだ。
          それを理解していた頼久は、あえて彼女の手を握った。















          「…………ありがとうございます、頼久さん」

          「もったいないお言葉です、殿」



          やっと先ほどの笑顔が戻ってきた
          そんな彼女を見て、頼久の表情も自然と優しいものになっていた。




















          「姫ー!どちらにいらっしゃいますか、姫ー!」















          そのとき、どこからかを呼ぶ女性の声がした。
          その呼び方からして、どうやら平安の世で言う女房のような者らしい。















          「どうしよう、あたしを捜してる!」



          今日は出かける予定があったんだった、と慌てる










          「せっかく頼久さんに本を取ってもらったのに、
           全く読まないでまた戻すことになっちゃいますね……」



          本当に申し訳なさそうな顔をしたから、
          頼久はそっと本を取り、それを元あった場所に戻した。















          「お気になさらず……
           あなたがあの本をご覧になる際は、私がお取りしますので」



          頼久の言葉に、は本当に嬉しそうに笑みを浮かべた。















          「あまり待たせては心配をおかけすることになります。
           参りましょう……姫」

          「はい!」



          そうして差し出された頼久の手を、は迷わず取った。

































十月生まれへの指令:騎士になりきれ






(あなたの笑顔を守るのは いつだって自分でありたいのだ)








































          ++++++++++++++++++++++++++++++++

            遙か十周年記念企画、十月の頼久さんVer.でした!いかがでしたか?
            頼久さんも何気に初書きなのでたどたどしい気が…。
            ちゃんと頼久さんになってたらいいんですが^^;
            
            最近遙かの漫画を読み直したんですが(今かよ
            ……とゆーか途中からよく解んなくなって最終話も読めてないので
            読み直すことにしているんですが、
            一巻を読んだ限り、頼久さんがすごく格好いい気がする。
            初めこそ不審者だと思ったから神子に斬りかかろうとしたけど
            その後、なんか守ろうとしてくれててすごい格好よかった!

            三木さん担当だとずば抜けて将臣くんが好きだけど
            (次は頼忠さん……短髪&とある立ち絵が好きすぎるから)
            頼久さんにもハマりそう。……いや、もともと好きだけどさ。

            とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
            人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
            宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!

            →遙か十周年記念企画トップへ