〜右の扉〜
「ここが、風早たちが数年過ごしていた世界なのですか」
「うん……本当に懐かしいです」
右の扉を開けた風早と道臣は、辺りを見回す。
全く見知らぬ場所ではあったが、風早には、
そこが自分たちが暮らしていた世界だとすぐに解ったようだ。
「ところで……殿はどちらに?」
「ええと……ちょっと待っていてください、道臣」
そう言うと、風早は精神を集中させるように目を閉じ、
しばらくその体勢のまま何かを探り始めた。
「……良かった、は近くに居るみたいですね」
「本当ですか?」
「ええ」
急ぎましょうという風早の言葉に道臣も頷き、共に走り出した。
「これは一体……」
「ああ、これはエレベーターというものです。
高い建物には必ずついているんですよ」
これで建物の上下を移動できるんです、と続ける風早の話を、
道臣は感心しながら聞いている。
……と、そんなとき、どこからかメロディーが聞こえてきた。
「この音、風早から聞こえますが」
「ええ、俺の服のポケットから……」
風早が不思議に思いながらポケットの中を探ってみると、
そこにはケータイが入っていた。
着信中の文字と「」という名前を見た風早は、手早く通話ボタンを押す。
「ですか?」
『風早殿! 今どちらにいらっしゃるのですか?』
「今ですか?と同じ建物の中には居ますよ」
『それなら間に合いそうですね』
事情が把握しきれていない風早に対し、は説明をする。
すると、どうやら彼女の話によれば、
これから共に出演する番組の収録時間が迫っているとのこと。
他の出演者も既に集合しているから、
心配したは風早に電話をかけた……というわけである。
「道臣殿には電話が繋がらないのですが……
風早殿とご一緒ですか?」
「はい、一緒に居ますよ。
これから二人で、そちらに向かいます」
『解りました。
スタッフの方には、そうお伝えしておきますね』
それではまた、と風早はとの電話を切った。
「……どうやら急いだ方が良さそうですね」
「そうだね……が待ってる。急ごう」
「はい」
そうして、二人はエレベーターでの居る階へと降りた。
「風早殿!道臣殿!」
エレベーターの前で待っていたらしいが、
二人の姿を見つけたとたん走り寄ってくる。
「殿……申し訳ありません、お待たせしてしまって」
血相を変えている彼女を見て、道臣は本当に申し訳なさそうに言った。
「いいえ、気になさらないでください。
私はただ、お二人が何か危険にさらされているのではないかと、
大げさに考えてしまっただけで……」
私の方こそ要らぬ気を遣ってしまって申し訳ないです、と、
は続けた。
「殿……」
そうか、この人は。
いつも自分のことは二の次で、第一に人のことを考える。
そんな人だった。
「千尋が、かつて敵の立場に在ったを心から信じていたのも
おそらくのこういう性格のためかもしれませんね」
「……そう、ですね」
どうやら風早も、について色々と考えていたようだ。
彼女には聞こえないくらいの声で、道臣に言った。
「……あ、皆さんをお待たせしているのです!
早く集合しないと…………」
「そうですね、まで怒られてしまいますし」
「急ぎましょう、殿、風早」
そんなことを言い合い、三人は仲良く収録スタジオまで走っていった。
十一月生まれへの指令:歌手になりきれ
(異なる世界でも 彼女が居ると心が安らぎます)
(うん それは同意見ですよ)
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遙か十周年記念企画、十一月の風早&道臣殿Ver.でした!いかがでしたか?
二人もほんと好きです。風早は4で2番目に好きだし……
なんてったって道臣殿は鳥海さんですからね!!素敵すぎる。
風早も、ほんと色々書いてみたいキャラなので
これからどんどん挑戦していきますよ。
道臣殿も……ああいう人ほど、書きたくなる。
悩んでいる人を諭す話、書くの好きなんですね。わたし。
てか、今回風早がさんの居場所を察知できたのは……
まあ色々(?)力を持っているからです。
その辺を追究しない道臣殿は空気を読んでいる(笑)
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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