〜右の扉〜










          右の扉を開けた忍人と夕霧は、白で統一された建物の中に居た。










          「ここがあの人の言うとった『病院』なん?」

          「おそらくな」



          管理人の言葉を思い出す夕霧に、忍人も同意する。










          「ここでの病を治すということだったが……」

          「が見当たらへんねぇ」



          どないしよか、と夕霧が口にした直後。
          向こうから聞き覚えのある声がした。















          「忍人さん!夕霧!」

          「ニノ姫!」



          そう、その声の主とは、中つ国のニノ姫――葦原千尋である。










          「千尋ちゃん、そない慌ててなんやあったんか?」

          「ええ、大変なの!」



          夕霧の問いに対し、慌てた様子で答える千尋。















          「が倒れちゃったのよ!」

          「何だと?」

          「ホンマに!?」



          さすがの二人も、千尋の言葉に驚いたようだ。










          「とにかく二人に診てもらいたいから、ついてきて!」



          の容態が気になった二人は、千尋の指示通り彼女の案内に従った。


































          「この部屋よ」



          倒れたは、ひとまず空いていた病室に運ばれたという。
          忍人がその部屋の扉を開けると、奥のベッドで横になっている彼女の姿が目に入った。















          「!千尋ちゃんに倒れたって聞いたんやけど、平気なん?」

          「はい……そんなに大げさなことではありませんから」



          夕霧に対しそう答えたではあったが、
          やはりいつも彼女が纏っている凛とした空気は、今は無い。
          そんな彼女の診察を、忍人は無言で始める。















          「…………過労だな」



          少し間を空けて、忍人が言った。










          「え、過労……ですか?」



          そう聞き返したのは、ではなく千尋だった。















          「ああ。ただ単に疲れがたまっていて、
           さらには食事も十分ではなかったのだろう」

          「それが原因で倒れたってわけやね」

          「ああ」



          倒れた原因が疲労だと知って驚く千尋とは違い、は罰が悪そうな顔をしている。
          それを、忍人も夕霧も見逃さなかった。










          「どうやら、当の本人には自覚があったみたいやわ」

          「そうだな」

          「あっ、その……」



          二人にそう言われ、何も言えなくなってしまった
          どうやら観念したようで、小さな声で「ごめんなさい」とだけ言った。















          「とにかく、しばらく安静にしてなきゃあかんよ?」

          「はい」

          「栄養を摂ることも忘れるな」

          「はい」



          二人は、に対し的確に指示を出す。










          「ニノ姫、君にも監視を兼ねて入院中はの世話をしてほしい」

          「もちろんです、忍人さん」



          仕事熱心なは、自分の体調を顧みないのである。
          今回のことでそれを再確認した忍人は、
          駄目押しの意味で千尋にそう言った。















          「あまり体にさわってもいけないからな……
           ひとまず、俺は戻る」

          「本当はもっとおしゃべりしてたいんやけどね」



          そう言いながら、二人は病室から出ようとする。










          「あ、あの!」



          そんな二人を引き止めたのは、だった。















          「お二人とも……ご心配をおかけして、申し訳ありません。
           それから……」



          それから、ありがとうございました。










          その「ありがとう」に様々な意味が含まれていることを、
          忍人も夕霧も理解していた。















          「気にしなくていい」

          「それより、早く元気になるんよ」



          そう言って微笑んだ二人は、今度こそ病室から出ていった。








































十二月生まれへの指令:医師になりきれ






(彼女の頑張りは尊敬できるが、行き過ぎは良くないと思う)



(本当にその通りやわ)








































          +++++++++++++++++++++++++++++++++++

            遙か十周年記念企画、十二月の忍人&夕霧Ver.でした!いかがでしたか?
            忍人はなんと言っても4で一番好き!
            夕霧もあの立ち位置が好きで、かなり懐いていたわたし(何
            二人とも大好きなんですよ。

            忍人はずっと前から考えてある長編があるので
            早くそれを形にしたいな、と思っています。
            夕霧もなんか書きたい!夕霧ルートをちょっとパクった感じで書きたい(え
            あれはなんか、もやもやした感じで終わったから。あたし的に。

            とにかく結論として言えば「書きたい!」ってことですね(え
            もっと時間がほしいです^^;

            とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
            人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
            宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!

            →遙か十周年記念企画トップへ