〜右の扉〜
一番右の扉を開けた岩長姫は、かなり高そうなシャンデリアのある
とても広い部屋に立っていた。
現在の状況を把握するべく辺りを見回す岩長姫。
だが、ぱっと見た感じでは、人は見当たらないようである。
「さて、どうしたものかねぇ」
そうして考えてみるが、いまいちいい考えは浮かばない。
だいたい、異世界と一口に言っても、どのような世界か全く知らないのだ。
いい考えが浮かぶ方がおかしいのかもしれない。
岩長姫がそう考え始めていたとき、向こうから見知らぬ青年が走り寄ってきた。
「オーナー!
料理の準備が出来ました。
後は、オーナーのお知り合いという方がいらっしゃるだけです」
「料理?」
「はい、今夜はオーナーのお知り合いの方をお招きし、
おもてなしをするとおっしゃっていましたから。
もちろん店は貸切となっていますし、料理も最高のものを用意しています」
この青年が言う「オーナー」とは、まあ自分のことで間違いないだろう。
しかもこの感じからして、この建物内では相当の権力を持っているはずだ。
そして、今の会話に出てきた「知り合い」というのは、
ここに来るまでの管理人の話からすれば、きっとのことだろう。
長年の経験からか、鋭い勘を持つ岩長姫はそこまで予想をしていた。
「失礼します、どなたかいらっしゃいませんか?」
そんなとき、向こうの方から少女の声が聞こえていた。
間違いなく声の持ち主はである。
「さて、待ち人が来たようだよ。
とっとと準備に取り掛かりな」
「はい、オーナー」
青年にそう告げると、岩長姫はのいる方へ歩き出した。
「よく来たね、」
「岩長姫!」
岩長姫の姿を見つけたは、小走りで駆け寄ってきた。
「お招き頂いて、ありがとうございます。
とても素敵なお店をお持ちなのですね」
「ああ、そうだろう?」
正直この店を見たのも今日が初めてだが、そこは岩長姫だ。
知らない場所で慌てふためくということも、ないようである。
「さあ、立ち話もなんだからね。こっちに来な」
「はい」
そうして、岩長姫はを店の中に招き入れた。
「いらっしゃいませ。
本日は特別なコースを用意しておりますので、ごゆっくりお楽しみくださいませ」
「あ、ありがとうございます」
それから、豪華な料理が次々と運び込まれた。
はそれを本当においしそうに食べ、
そんな彼女を見ている岩長姫も、満足そうだった。
「どうだい、。ここの料理は」
「はい、とてもおいしいです……
アシュヴィン様にも、召し上がって頂きたいくらいですよ」
「常世の皇子、ねぇ」
は、もとよりアシュヴィンに仕えている身。
本来、岩長姫とは敵という立場に居る。
…………しかしながら、それもついこの間までの話。
ニノ姫である千尋、そしてこののおかげで
中つ国と常世の国は和解することに成功したのだ。
特には、現在定期的に岩長姫のもとで修行しているため、
このように共に食事をする間柄にまでなっている。
「はあの皇子に惚れてるのかい?」
「そっ、そういうわけでは……
ですが、上に立つお方として、尊敬しています」
岩長姫の言葉に少々焦る。
だが、どうやら嘘を言っているわけでもなさそうだ。
「じゃあ、好きな男ができたらあたしに教えるんだよ」
「え……それは必ず、ですか?」
「当たり前だろ?」
再び焦るに、何でもないという風に言ってのけた岩長姫。
だが、その態度が逆にすっきりしていて、も笑みをこぼしている。
「では、そのときは必ずご報告します」
「ああ、約束だよ」
「はい」
は、自分を信頼してくれている。
それが、岩長姫にとってはとても嬉しいことだった。
何だか娘ができたような、そんな思いもあったからだ。
「……よし、じゃあ最後に甘いもんでも食べるかね」
「はい」
最後にデザートをご馳走してもらい、は今宵の食事を満喫したのであった。
三月生まれへの指令:ウェイターになりきれ
(あたしはオーナーとかいうやつだったみたいだねぇ
まぁ、が喜んでくれれば何でもいいさ)
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遙か十周年記念企画、三月の岩長姫Ver.でした!いかがでしたか?
てか、岩長姫のキャラが解らなすぎて困った^^;
一月の蘭以上に解らない……
遙か4のゲームをやるしかあるまい、本当に。
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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