〜真ん中の扉〜
「あっ、景時さん!」
真ん中の扉を開けた景時が辺りの様子を探る時間もないほど、
はすぐに声を掛けてきた。
「や、やぁ、ちゃん。何だか嬉しそうだね」
突然のの登場に驚きつつも、
の嬉しそうな表情に気付いた景時は、そんなことを言った。
「はい、景時さんがパーティーをしてくれるって言ってたので、
楽しみにしてたんですよ!」
景時が「パーティ」という言葉の意味に戸惑っていると、が宴のことだと補足を加えた。
「何もお祝い事とか心当たりはないんですけど……
でも、すごく嬉しいです!」
の言動からして、その宴を開くことにしたのは自分であろう。
だが、今しがたここに来た景時には、
自分のことであってもよく解らない状況だった。
だが、祝い事もなくのために宴を開こうとしたならば、おそらくは…………。
「……そっか、そんなに楽しみにしててもらえたなんて嬉しいよ。
さっそく宴――パーティを始めようか!」
「そうですね!」
そうして、景時はを奥の部屋に案内した。
景時がと共に奥の部屋に向かうと、
そこには予想した通り宴の準備が整えられていた。
宴をすると言って、を呼び出したくらいだ。
おそらく、準備は既に終わっていたのだろう。
景時は、そんな風に予想していたのである。
「それにしても、この喫茶店って本当におしゃれですよね……
なんだかドレスを着てきても似合いそうな気がします」
「どれす?」
「あ、えーと、ドレスっていうのは……」
どう説明しようか迷うの目に、積み重なっている雑誌が入った。
女性ファッション誌であるところを見ると、朔の物だろうか。
とにかく、ドレスについて説明するためにはそれを手に取った。
「……あっ、ドレスってこんな感じです!」
偶然にもその雑誌でドレス特集をしていたため、
はドレスについて説明を簡単にすることが出来た。
「で、男の人はやっぱりスーツですかね……こっちの人みたいな」
隣に載っている男性の写真を指差しながら、は続けた。
「…………ちゃんも、こういうの着てみたいかい?」
「そうですね〜、一回くらいは着てみたいかも」
「うん、解った。任せといて!」
「え?」
の言葉を受けて、そんなことを言った景時。
何を、とが聞く前に、景時は言霊を唱えていた。
「……はい、出来たよちゃん!」
「…………?」
いつの間にかつむっていた目を、ゆっくり開く。
そして、近くにあった鏡を見て、今度は目を大きく見開いた。
「ええっ!?これって、ドレス!?」
そう、なんと景時は、をドレス姿に変えてしまったのだ。
「ついでにオレも変身してみたよ。どうかな?」
「わあ、すごく似合ってます!」
「そ、そうかな?ありがとう。ちゃんも似合ってるよ」
素直に感想を述べたの言葉に照れつつも、景時はそんなことを言った。
「びしっと決めたことだし、改めてパーティを始めようか!」
「賛成です!」
「それじゃあ……お手をどうぞ、姫」
「あはは、なんだか景時さんらしくないですね」
そんなことを言いつつも、はしっかり景時の手を取っていた。
自分がのために宴をしようと言い出した理由は、本当のところはよく解らない。
だが、想像できないわけではなかった。
彼女は、未来を知っているゆえにいつも苦しんでいたから。
おそらく自分は、その苦しみを少しでも和らげたかったのではないか。
だから、こんな風に宴を開こうと考えたのではないか。
これから先、自分が彼女のためにしてやれることなんて、わずかであるかもしれない。
それでも、彼女が心から笑ってくれるなら。宴を催すくらい、簡単なことだ。
「景時さん、ありがとうございます!」
三月生まれへの指令:ウェイターになりきれ
(君のその言葉があれば オレは何だってできるよ)
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遙か十周年記念企画、三月の景時さんVer.でした!いかがでしたか?
遙か3キャラは、ほとんどみんな好きなんですよね!
景時さんみたいなお兄ちゃんほしいよv
朔が羨ましい^^
てか、迷宮のあのイベントが好きすぎてちょっと真似してしまった…^^;
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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