〜一番右の扉〜










          布都彦が一番右の扉を開くと、その先は部屋のような場所であった。
          辺りを様子を探っていると、まもなくして部屋に誰かが入ってきた。















          「遅れて申し訳ないです、布都彦先生」

          「殿!」



          突然が現れたことに、驚きを隠せない布都彦。
          ここに来る前、管理人がは同僚だと言っていたが、
          それをすっかり忘れていたようだ。










          「布都彦先生、学校でその呼び名は禁止ですよ。
           何かとうるさい先生方もいらっしゃるので」

          「あ、も、申し訳ありません!」



          の言葉に、慌てて謝罪する布都彦。
          だが、言葉とは裏腹にの表情は穏やかだ。


















          「……とは言っても、もう残っている先生もほとんどいないから、
           そんなに気にしなくて大丈夫だと思うよ、布都彦」

          「は、はあ……そうでしょうか」

          「うん」



          いつもの口調に戻ったに、少し安心する布都彦。
          どうやら、彼女は怒っているわけではなさそうだ。




















          「じゃあ、作業を始めよう」

          「は、はい」

          「まず、この資料から作ろうと思っていて……」



          これから行う作業について、布都彦に説明し始める
          そんなを、布都彦はこっそり見る。










          ――――良かった、元気そうだ。





          元々敵の立場にあったを、よく思わない者もやはり存在しているのだ。
          少なからず陰口も叩かれているようだから、
          布都彦は、そんなのことを気にしていたのだ。




















          「それで……
           …………布都彦、私の話きちんと聞いていた?」

          「え、は、はい!」



          完全に考え事に集中していた布都彦。
          話を聞いていたかと問われれば、実際のところは聞いていなかった。
          だが、思わず聞いていたと答えたのは布都彦らしくもある。










          「嘘。全くこちらを見ていなかったでしょう」

          「そ、それは……申し訳ありません」



          先ほどと同じように、謝罪する布都彦。
          今度はより一層反省しているようで、その視線を下に向けている。




















          「何を考えていたの?」

          「え……?」

          「何か、気になることがある?」



          さすがだ、と布都彦は思ってしまった。
          初めからただ者ではないと感じてはいたが、やはり鋭い人だった。





          布都彦は、羨望の眼差しをに向けている。
          それを理解したのか、は苦笑交じりに言った。















          「私は、特に感心されるようなことはしていないよ。
           ただ布都彦の様子が違うときは、すぐに気付くから」

          「殿……」



          布都彦は、の言葉の意味がよく解らなかった。
          しかしながら、もそれを重々承知しているようである。










          「布都彦のことはよく見ているから、すぐに気付くの」

          「え……」

          「あなたが、私のことを気にかけてくれているのと同じ。
           私もあなたのことを気にかけているから」



          だから、隠そうとしたって無駄だとは続けた。


















          確かに、自分はのことを心配していたが……
          まさか、それを本人に悟られていただなんて。





          己の未熟さを痛感しながらも、
          自分のことをが気にしていてくれたことが、嬉しくもあった。















          「……さあ、とにかくこの作業を終わらせないと」

          「は、はい」

          「終わったら、どこか散歩しに行きましょう。
           今日は星が綺麗だって、千尋先生がおっしゃっていたから」

          「はい!」



          それから、二人はある程度の打ち合わせをし、
          それぞれ作業に取り掛かった。






































          「見事な星空ですね……」

          「うん……とても綺麗」



          あれから仕事をひと段落させた二人は、の言葉通り付近を散歩していた。
          こちらでは先輩教師にあたるという千尋の情報は確かだったようだ。





          二人は、しばらく無言で星空を眺めている。




















          「…………布都彦」

          「はい?」

          「今度は、桜を見に行きましょうね」

          「……はい!」



          それは、自分と共に出かけたいとが思ってくれているということ。
          布都彦にとって、それもまた嬉しい言葉であったのだ。








































四月生まれへの指令:高校教師になりきれ






(共に、支えあっていきたい)











































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            遙か十周年記念企画、四月の布都彦Ver.でした!いかがでしたか?
            あんま宣言しないけど、実は好きな布都彦v
            可愛いよね…vストーリーも好きだし。いい意味で理解しやすい。

            とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
            人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
            宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!

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