〜一番左の扉〜










          扉を開いた天真は、辿り着いた場所で辺りを見回す。
          すると、自分が何処にいるのか、すぐに解ったようだ。















          「学校の廊下だな」



          そう、天真は学校の廊下に居たのだ。
          もともと高校生である天真には、廊下など見慣れた場所であったから
          すぐにそれを察知できたのである。










          「……っと、とりあえず職員室に行けばいいのか?」



          管理人の話によれば、自分はここで体育を教える教師だという。
          状況がつかめないし、とりあえず職員室に行けば何か解るだろう。





          そんな結論に辿り着いた天真は、とにかく職員室を目指すことにした。















          「森村先生!」



          歩き出した天真の後ろから、聞き覚えのある声がした。










          「やっぱりかよ」

          「ちょ、ちょっと!学校でその呼び名は駄目って言ったでしょ?
           高校時代からの仲とはいえ、うるさい先生も居るんだから」



          「森村先生」なんて呼ぶから、どんな間柄なのかと思えば。
          今の延長線上みたいな感じらしいな。





          天真はそんなことを考えた。















          「だいたい天真は、変なとこで神経質なクセに
           こういうとこテキトーなんだよね……」

          「何だよ、悪いか?」

          「悪いっていうわけじゃないけど、いいってわけでもないかな」

          「どっちだよ、ったく」



          なんて互いに悪態をついているようだが、二人の表情は穏やかだ。
          昔からの馴染みということで、も天真も気を張らずに話せる相手だからだろう。










          「……あ、そうだ。忘れないうちに伝えとくけど、
           今日蘭が一緒に夕飯食べようって言ってたよ」

          「蘭が?」

          「そう。あかねと詩紋くんも呼んで、みんなで食べたいって。
           天真に言うの忘れたから、伝えといてってさ」

          「なんで直接俺に連絡しないんだよ」



          天真は、ふと疑問に思ったことをに問いかけた。















          「さあ……蘭のところも、もうすぐテストだからじゃない?
           今回は蘭がテスト作るって言ってたからね」



          ってことは、蘭も教師なのか?





          天真はそう思ったが、あえて口にすることはなかった。
          そんなことをすれば、が不思議がるだろうと思ったからだ。










          「でも、音楽の先生なんて蘭っぽいよね。似合ってる気がする」

          「そうか?」

          「そうだよ」



          へぇ、蘭は音楽担当なんだな。
          の言葉から、色々な情報を得る天真であった。















          「それで、みんなで夕飯食べるの天真も賛成だよね?」

          「あ、ああ……お前も行くんだろ?」

          「もちろん!」



          当たり前じゃん、とは続けた。
          そんな風に言い切るを見て、天真は少し笑ってしまう。










          「ちょっと!今の笑うとこじゃないでしょ?」

          「悪りぃ、言い切ったお前が頼もしく思えてさ」

          「うっそ!絶対そんなこと思ってないでしょ!?」

          「思ってる思ってる」



          その言い方が、なんか嘘くさいよ!





          は天真に抗議したが、天真はしばらく笑っていた。










          「じゃ、今日は集まってメシってことでな」

          「う、うん……って、なんか丸め込まれたような気がするんだけど」



          未だ不服そうにしているを見て、
          天真はなんとなく満たされた気分になった。





          京に行ってから、こうやって些細なことで笑い合うことが減った。
          だから天真は、今この時間が尊いものに思えたのだ。
          最近は妙に気を張っていたが、自然体のようにも感じたから。















          「たぶん、詳しいことは後で蘭からメールとか来るかもしれないから」

          「ああ、解った」



          気を取り直したは、最後にそう伝えた。


















          「そういえば、
           お前さっき走ってきてたけど、何か急いでたのかよ?」

          「え……? あっ、そうだ!職員会議が始まるんだった!」



          しまったという顔をする
          近くにあった時計を見ると、8時15分。
          確かに、先生たちはこのくらいの時間に打ち合わせとかしてたよな。





          天真はのん気にそう思った。















          「一度職員室に来たきり天真の姿が見えないから、捜しに来たんだよ!
           職員会議に遅れるからって、そう思ったのに……
           これじゃあたしまで遅刻じゃん!」



          ひどく焦り出す。そんな彼女に、天真は言った。










          「まあ、走れば間に合うだろ」

          「だから、その走るのが無理なんだって!
           体育教師の天真にとっては得意分野だろうけれど、
           あたしは走るのが一番苦手なんだから!」



          確かに、は昔から体育――特に走る競技は全体的に苦手だった。















          「大丈夫だって、俺が引っ張ってってやるから。ほら、急ぐぞ」

          「ちょ、天真!走るの速いって!」



          こんなところ見られたら、教師が廊下を走ってどうする!
          とか絶対言われるよ!





          が後ろでそんなことを言っていたが、
          天真は何だか久しぶりに思いきり楽しめているような気がした。
          文句を連ねるも、言う割にはどこか楽しそうに見える。












































四月生まれへの指令:高校教師になりきれ






(たまにはこういう時間があっても いいよな)












































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            遙か十周年記念企画、四月の天真くんVer.でした!いかがでしたか?
            天真くんマジで好きなんですよ!遙か1で一番です。
            てか、地の青龍はみんな好きだv
            あかねちゃんが羨ましすぎますな…!

            とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
            人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
            宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!

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