〜真ん中の扉〜










          「ここが『食堂』という所かな?」



          真ん中の扉を開けた翡翠は、食堂の調理場に立っていた。
          翡翠が居るこの食堂はカウンターテーブルになっているため、
          客からもこちらが見えるし、こちらからも客が見えるようになっている。















          「…………さて。
           どうやらは居ないようだが」



          翡翠がひとまず調理場から出てを捜そうかと思ったとき。
          正面ではなく、何故か店の奥からが出てきた。










          「やあ、
           相変わらず君は思いもよらぬことをするね」

          「ちょ、ちょっと翡翠さん!それどういう意味ですか!?」

          「そのままの意味だよ」



          翡翠のその言葉に対し、言い返す
          からかわれていることも理解してはいるのだが、
          性格ゆえか、必要以上にムキになってしまうのである。


















          「はは、私が悪かったよ。
           ところで、どうして君は正面ではなく裏から入ってきたのかな?」



          さすがは、八葉の中の年長者である。
          の怒りをさらっとかわし、
          店の裏から入ってきてしまった理由をそれとなく聞きだそうとする。










          「あ、えーと……
           ほんとは正面から入ろうとしたんですけど、『準備中』って札が立てかけてあって」



          それでも今日は翡翠に呼ばれていたから、店の裏口から入ってきたのだという。















          「そうか……それは済まなかったね」



          突拍子もない行動のように見えるが、
          彼女は彼女なりに気を遣ってやっているのだ。
          そう考えた翡翠は、素直に詫びの言葉を述べた。










          「あの、あたしも勝手に入ってきてしまってごめんなさい」



          素直に謝った翡翠につられたのか、もそんな言葉を口にする。




















          「さて、この話はもうやめにしようか。
           ひとまずそこに掛けなさい」

          「は、はい」



          いつまでもこんな話をしていてはつまらないだろう。
          そう考えた翡翠は、とりあえずを椅子に座らせた。















          「今日は私が何か作ってあげようか」

          「えっ!翡翠さんって料理できるんですか!?」



          翡翠の言葉に対し、あからさまに驚く
          そんな彼女を前にさすがの翡翠も苦笑を浮かべた。










          「ふふ……他でもない君のためなら、何でもやってみせるよ」

          「もう、またそういうことを言うんだから翡翠さんは!」



          翡翠としてはを何気なく口説いたつもりなのだが、
          その意は全く通じていない。





          やはり、どこに行っても鈍いのは変わらないようだね。










          仕方ないなとこっそりため息をつきながら、翡翠はそんなことを考える。




















          「でも、翡翠さんの作る料理か……
           なんだかすごくおいしそう!楽しみだな♪」



          とても楽しそうに、はそう言った。
          そんな彼女の笑顔を見て、翡翠も思う。





          ……ああ、やっぱりには敵わないね。










          彼女は、初めからそうだった。
          いつも前を見ていて、後ろ向きになることなどほとんどない。
          落ち込むことがあっても、すぐに立ち直る。





          強い、人間なのだ。彼女は。















          「……では、少し時間を頂くよ、

          「はい!」



          色々と考え出した翡翠であったが、ひとまずそれはやめにして、
          今はのために腕をふるうことにした。





































          「さあ、召し上がれ。
           君のために作ったものだよ」

          「わあ、おいしそう!」



          目の前に料理を盛った皿を置いてやると、が感嘆の声を上げる。










          「すごい、翡翠さんって何でも出来ちゃうんですね……」



          感心しているは、その料理をまじまじと見つめる。















          「君のためなら、なんでもやってみせると言っただろう?」

          「あっ、そういえばそうでしたね!」



          翡翠としては先ほどと同じように本気で口説いたつもりなのだが、
          やはりというか、は冗談としか思っていないらしい。




















          「これは、なかなか大変な相手だね」










          「……え?何か言いました?」

          「いいや、何でもないよ」



          そんな翡翠の言葉に対し、首をかしげる
          だが、翡翠が答えてくれないと解ったのか、すぐに目線を料理に戻す。















          「じゃあ、いただきます!」

          「ああ、召し上がれ」












































五月生まれへの指令:食堂の店員になりきれ






(まあ 時間をかけてじっくりいくさ)








































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            遙か十周年記念企画、五月の翡翠さんVer.でした!いかがでしたか?
            翡翠さんは……実はゲームでEDを迎えていないorz
            ゲーム借りてたこともあったし、あと、
            長編書き始めてからは勝真さんルートと泉水ルートやるので
            いっぱいいっぱいだったので;

            できれば、2はPSP版を買ってプレイし直したいです!
            お金ためないとね〜……。
            
            とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
            人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
            宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!

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