〜右の扉〜
右の扉を開けたサザキとシャニは、見慣れぬ場所に居た。
だが、二人ともさほど焦ることもなく、
ここが管理人の言っていた「おふぃす」なのだろうと考えていた。
「あ……お二人とも遅いですよ」
ほんの少し不機嫌な様子でそう言ったのは、だった。
どうやら、二人のことをしばらく待っていたようで
彼女から待ちくたびれたオーラが少し出ているように見える。
「わ、悪かったって」
「ごめんね、お姉ちゃん」
実を言うと状況がよく解っていない二人であったが、
ここはひとまず、謝っておくことにした。
「……とにかく、いつまでも怒っているわけにもいきません。
明日までに準備せねばいけない資料がありますから、
皆さんで協力して急いで作りましょう」
そう言われたものの、何をすればいいのだろうか。
慣れない異世界で戸惑う二人であったが、
が的確な指示をくれたおかげで、
やるべきことは理解できたのであった。
「分担すればすぐに終わる仕事です。頑張りましょうね」
「そうだな!」
「うん!」
にそう言われてしまっては、頑張らないわけにはいかない。
同じようなことを考えた二人は俄然やる気をだし、作業に取り掛かった。
数時間後。
資料を作り終えた三人は、散らかったデスク周りを片付けていた。
「そうだ、何か飲み物でも淹れてきますね」
片付けも一通り終わった頃、がそう言ってその場を離れた。
「……にしても、異世界だってのに普通に生活できそうだなぁ」
が離れたのを見計らって、サザキがそんなことをつぶやく。
「この世界に来た瞬間から、適応してるのかも」
あの管理人さんって人なら、何でも出来そうだから。
不思議がるサザキに向かって、シャニはそう言った。
「お待たせしました、お茶です」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「待ってました!」
慣れない仕事の後ということもあり、普通のお茶にも無邪気に喜んでくれる二人。
そんな彼らを見て、もこっそり微笑んだ。
「……あ、忘れてました。
私、お二人にお渡ししようとおもっていたものがあって」
「渡そうと思ってたもの?」
「って、何だ?」
二人してそう聞き返すので、少しおかしくなってしまった。
「少し、こちらで待っていてくださいね」
だが、詳しい説明はせずに部屋を出て行ってしまった。
こっそりを追いかけてもいいが、待てと言われたのだ。
あまり無粋なことはしない方がいいだろう。
サザキとシャニは、大人しくが戻るのを待つことにした。
「はい、お待たせしました」
の手にあるのは、一つの白い箱。
一体何が入っているのかと、きょとんとした顔をする二人。
「どうぞ、開けてみてください」
「いいのか?」
「はい」
今一度確認するサザキに向かって、笑顔で答える。
そんな彼女の表情に顔を赤くしつつ、
サザキはもう一度白い箱に目線を落とした。
「ねえ、僕が開けてもいい?」
「あー……そうだな、じゃあここはお前に任せるぜ」
意外と面倒見のいいサザキは、この場をシャニに譲ることにした。
「おお……!」
「わあっ……!」
箱を開け、中を見た二人はそれぞれ感嘆の声を上げる。
そこにはホールケーキが入っており、ケーキの上のプレートには
「祝・一周年」と書かれていた。
だが、一周年とは一体何のことだろうか。
そう思った二人の疑問は、次のの言葉で解決された。
「今日は、お二人がこの部署にいらしてちょうど一年経った日なので
何かお祝いに、と作ってみたのです」
どうやら、自分たちはと共に仕事をするようになって
ちょうど一年を迎えたらしい。
その祝いとして、彼女はこうしてケーキを作ったのだ。
偶然にも、先日ケーキの話を千尋から聞いていた二人。
これがそのケーキだということは、すぐに解っていたようだ。
「これ、食っていいのか?」
「ええ、どうぞ」
「僕も?」
「もちろんですよ」
そう言いながら、二人のためにケーキを切り分ける。
「本当は、もっと華やかの宴でも出来れば良かったのですが……
先ほどの資料制作の仕事が、入っていたものですから」
自分に出来る限りのことで祝おうと思ったのだと、彼女は続ける。
苦笑交じりに話す彼女に向かって、二人は言った。
「俺はこっちの方がいいけどな!」
「僕も、お姉ちゃんのお料理の方がいいよ☆」
「二人とも……」
華やかな宴よりも、のケーキの方が良いと言い切った二人。
そんな二人の言葉に、は照れながらも嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、二人とも」
六月生まれへの指令:会社の同僚になりきれ
(なんかよく解んねぇけど、嬉しいからいいか!)
(それについては僕も賛成!)
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遙か十周年記念企画、六月のサザキ&シャニVer.でした!いかがでしたか?
ぶっちゃけ二人あんま接点なさそうで迷ったんですが……
ふつーに会話させちゃいました^^;
まあ、何でもアリな企画ってことは最初にお話したので見逃してほしいです……!
サザキは32歳に思えない純情なところが好きで
とあるスチルは格好よすぎて悶えたよ……!
後で絶対ドリ書きます!
シャニもなかなか可哀想な立場にいるので、気になるひとりです。
常世三兄弟のドリとか、書いてみたいですよねー!
とにかく、最後までお付き合い頂き、ありがとございました!
人数が多いので短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです^^
宜しければ別Ver.もご覧くださいませ!
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